2014年10月20日月曜日

NHK「マッサン」感想。マッサン・男前の魅力。

NHKの朝ドラ「マッサン」が、大人気である。
放送も4週目にはいった。
私にも、この「マッサン」という「男」の、大全開な魅力が見えてきたので、とても楽しくなってきた。
マッサンこと亀山政春は、とても反骨精神の強い男なのである。
私は、「酒造り」という仕事が最初よくわからなかった。
でも、だんだんわかってきた。
それは、農業とはちがう。
農作物ができあがったところから、次の生産加工物を作る。
でも工業ともちがう。
酵母を使って醸造させるから、生きている産物である。
それを時間をかけて、何十年もときには何百年もかけて、熟成して育て上げる仕事である。

政春の実家はもともと、日本酒の造り酒屋である。
これは、代々続く、何百年もの旧家なのだろう、と思われる。
その家も仕事も、長男が跡継ぎをすることに決まっているのだろう。
エリーがいたら「どうして?」と問われそうであるが、日本の後継ぎというのは、長男が総領と決まっているのである。
それなので、次男に生まれた政春には、生まれたときから、長男にはどうしてもかなわない、という強い劣等感と、うちひしがれたかんじ、があるかもしれない。
それで、大阪の住吉酒造で働くことになる。
このあたりは、ドラマのなかでも描かれているが、婿養子に入るような話であった、ということである。
酒造りの家の次男が、酒会社の婿養子なので、自然と言えば自然の成り行きである。

そこで逆らったのが、政春の反骨精神であるように思われる。
留学先のスコットランドから、国際結婚のお嫁さんを連れてきたのだ。

もともと、この留学も、「次男だから」という理由が大きいように思われる。
「花子とアン」でも、村岡印刷のご長男が日本で父親と一緒に大きな会社を運営しているときに、次男はロンドンに新しい印刷技術を学びに留学に行っている。
この時代には、こうして、外国から新しい技術を学び取り入れることがさかんだったのかもしれない。
そうしたときに、長男と次男の役割が分かれるのは、あちらでもこちらでも同じ形態だったようだ。

そうして、スコットランドに留学に行かされた次男・政春は、そこで現地の女性エリーと恋に落ちて、もう日本には帰らなくてもいい、とまで思う。
そこを、エリーは「あなたの夢は日本でウイスキーを作ることでしょう」と言って、「私が日本に行くわ」というのである。
エリーは、政春の反骨精神も劣等感も、そして、できれば一国一城の主になりたいという野心も、よく理解していたように思える。
政春は、劣等感と野心を行ったり来たりしているような、心のありかを持っているようなのだ。

そうして、劣等感にさいなまれて、どうしても、もうだめかもしれない、というときに、うまく上手に支えてくれるのが、エリーという妻だったのかもしれない、と思う。

また、外国に行って、リベラルな空気に触れてきたのも、劣等感のある身としては、とても有意義だったのではないか、と思われる。
エリーが身に着けている、西洋なりの、リベラルさ、平等感覚、というのが、政春にとっては、心地よかったのではないだろうか。
そして、エリーと一緒にいると、日本のがんじがらめの造り酒屋の家制度や、長男跡継ぎ制度から、自由になれるのではないか、というかんじがする。

政春はこのあと、夢と希望と絶望と困難と、野心と劣等感と、旧習とリベラルの間を行ったり来たりしながら、ウイスキー造りを実現させて、一国一城の主となることができる。
そこまでの、熱意と失意が、女性たちにとっては、たまらなく愛おしくて、「このひとを支えてあげたい」と思わせる、男前の魅力になるのではないか、と私は思う。