2018年12月30日日曜日

連載・6 お料理エッセー・そら豆のひとりごと。 想い出のスイートポテト。


連載・6 お料理エッセー・そら豆のひとりごと。

想い出のスイートポテト。

きょうはとても寒くて、日本の本州でも、雪景色のところがあった。

汽車の窓から見る雪景色と遠くの山々の風情は、

本州であっても北海道であっても、とても似た雰囲気になる。

雪の白さが、すべて視界を埋め尽くすからかもしれない。



車窓の雪景色というと思い出すのが、

北海道の帯広に旅したときのことである。

それは真冬のことだった。

帯広の友達が、あちこちと案内してくれた。

「帯広の名物というとスイートポテトだから」と言って、

連れて行ってくれたのが、「アンデルセン」という菓子店である。

(現在は店名を改めて、クランベリー、というらしい)



北海道の名産品というといろいろある。

小樽は寿司で、札幌はラーメンかもしれない。

そして帯広は、おいしいお菓子の街である。

聞くところによると、北海道は年間を通して気温が低いので、

チョコレートの保存や製作に適していて、

ミルクやバターの製造もしている。

材料豊富で気候がいいということらしい。



帯広には、六花亭や千秋庵などの、昔から道民になじんでいる菓子店があって、

それらの店舗が統合されたり拡大されたりして、

こういう菓子店にぎわいになったようだ。



「スイートポテト」というと、とてもおしゃれな雰囲気があるが、

日本でいうと、「さつまいも」である。

さつまいもを使って作ったのが、「スイートポテト」というお菓子になる。

店によってもいろいろな作り方があると思うが、

帯広のスイートポテトは、薄いパイ生地の上に、ぼってりとポテトが乗っていた。

さつまいもをふかして、ペースト状にしたものを乗せてあるのだろう。

そしてそれをオーブンで焼いたのだと思う。



帯広のスイートポテトでとても特徴的だったのは、

それが、掌からはみだすほど大きかった、ということだ。

ちょっとしたお弁当箱ほどの大きさだった。



帯広駅で友達と別れてひとり汽車に乗り、

過ぎていく車窓の雪景色を見ていたら、とてもおなかが空いてきて、

彼女がバッグに押し込んでくれたスイートポテトの包みを、

なんだかただ、がむしゃらに食べた。

おなかと心が満たされたあと、ふしぎに、涙があふれてきた。