連載・6 お料理エッセー・そら豆のひとりごと。
想い出のスイートポテト。
きょうはとても寒くて、日本の本州でも、雪景色のところがあった。
汽車の窓から見る雪景色と遠くの山々の風情は、
本州であっても北海道であっても、とても似た雰囲気になる。
雪の白さが、すべて視界を埋め尽くすからかもしれない。
車窓の雪景色というと思い出すのが、
北海道の帯広に旅したときのことである。
それは真冬のことだった。
帯広の友達が、あちこちと案内してくれた。
「帯広の名物というとスイートポテトだから」と言って、
連れて行ってくれたのが、「アンデルセン」という菓子店である。
(現在は店名を改めて、クランベリー、というらしい)
北海道の名産品というといろいろある。
小樽は寿司で、札幌はラーメンかもしれない。
そして帯広は、おいしいお菓子の街である。
聞くところによると、北海道は年間を通して気温が低いので、
チョコレートの保存や製作に適していて、
ミルクやバターの製造もしている。
材料豊富で気候がいいということらしい。
帯広には、六花亭や千秋庵などの、昔から道民になじんでいる菓子店があって、
それらの店舗が統合されたり拡大されたりして、
こういう菓子店にぎわいになったようだ。
「スイートポテト」というと、とてもおしゃれな雰囲気があるが、
日本でいうと、「さつまいも」である。
さつまいもを使って作ったのが、「スイートポテト」というお菓子になる。
店によってもいろいろな作り方があると思うが、
帯広のスイートポテトは、薄いパイ生地の上に、ぼってりとポテトが乗っていた。
さつまいもをふかして、ペースト状にしたものを乗せてあるのだろう。
そしてそれをオーブンで焼いたのだと思う。
帯広のスイートポテトでとても特徴的だったのは、
それが、掌からはみだすほど大きかった、ということだ。
ちょっとしたお弁当箱ほどの大きさだった。
帯広駅で友達と別れてひとり汽車に乗り、
過ぎていく車窓の雪景色を見ていたら、とてもおなかが空いてきて、
彼女がバッグに押し込んでくれたスイートポテトの包みを、
なんだかただ、がむしゃらに食べた。
おなかと心が満たされたあと、ふしぎに、涙があふれてきた。