連載・11 お料理エッセー・そら豆のひとりごと。
七草かゆ。
お正月も明けて、1月7日は、七草かゆの日である。
お正月に食べ過ぎたおなかを休ませて、
春の代表的な草である七草を入れた、質素なおかゆをいただく。
お正月にはいろいろな儀式があるが、
この時期にこれを食べておくと、その年一年が幸せに暮らせる、
というとてもなにか、今年一年の成功を思う儀式だったのだな、
と思う。
一月にいただく七草は「春の七草」と呼ばれるもので、
セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・…と、国語の時間に丸暗記したような気がする。
これらの七草、つまりおかゆに入れるべき野菜は、
現代ではそうめったに手に入らない。
万葉集の時代には、この季節にちょっと河原に出れば、そのへんに生えていた草なのかもしれないが、
現代ではまず不可能だと思う。
そして、ずっと「七草かゆ」はあきらめてきたが、
このところ日本では、「原点回帰」ともいうべき現象が起きているようで、
この季節、スーパーマーケットへ行くと、「七草かゆセット」が販売されていて、
ちゃんと七種類の野菜が、セットされている。
値段はそれほどお安くはないし、正直いって、それほどおいしいものでもない。
でも、「季節を感じたい」という人は、いるものなのだと思う。
おかゆの炊き方はとても簡単なものなので、覚えておくと、熱を出したときなどに、
消化が良いので、役にたつと思う。
いったんごはんをたいて、そのごはんを改めてお湯で煮るものは、
「おじや」と呼ぶ。
おかゆは、米から炊くものだ。
一般的に「ごはん」は、コメの量と同じ分量の水を入れて、
炊飯器にかけるのだが、
この水の量を極端に(5倍から8倍くらい)多くすると、
コメが柔らかくなって炊き上がる。
これが「おかゆ」というものだ。
七草は、別のお鍋で、食べやすく刻んだものを、お湯で煮て、薄く塩味をつける。
おかゆが煮えたら、七草の煮えたものを上に載せて、
しゃもじで混ぜる。
こんなかんじで、七草かゆができる。
おかゆは簡単に炊けるので、具はいろいろなものを選んでみるといいと思う。
ほうれんそうや、わかめを煮たものも、おいしい。
梅干しをひとつ載せるのも、とてもいい。
あとは、ペースト状の味付け海苔もいい。
「江戸むらさき」やら「ごはんですよ」。
春の七草のひとつ、ナズナというのはぺんぺん草で、
1月のこの時期、深く根をおろして、地道に生えている。
これを抜くと、本当によい香りがする。
春先の庭仕事は、このぺんぺん草を抜くのが大仕事なのだが、
この香りをかぐと、春なんだな、と思うひとときである。