連載・10 お料理エッセー・そら豆のひとりごと。
お正月のおせち料理。
「おでんの具はどんなものが好きですか?」
なんていうアンケートがある。
アイドルタレントも「がんもが好き!」などと答えると、
なんだか急に親近感が湧いてくる。
では「おせち料理はどんなものが好きですか?」となると、どうだろう?
気分的には、重箱に詰まったあのきれいな姿を見ないと、お正月の気持ちがしてこないのだが、
「好きかどうか」「おいしいかどうか」というと、率直に言って「どうかな?」。
私の友達でも、「あれはどれをとっても甘すぎて」と言う人もいるし、
家族でも、栗きんとんに黒豆に、昆布巻きも甘すぎて、どれをとっても、
「これが好き」とは、心底思えないようだ。
もともと、おせち料理は、年末年始には漁がなく、市場も開かれなくなるので、
新鮮な食材が手に入らなくなる、そして、調理の作り手たちもお正月には休みたい、ということで、
暮れのうちに3日分の食べ物を作っておいたようだ。
そうすると、日持ちが良いのは、砂糖をたくさん使って甘く煮たものである。
また、昔の時代は砂糖は貴重品であったので、
お正月以外には、甘いものが食べられなかったらしい。
それで、お正月のぜいたくとして、ああいった甘い料理が重箱に詰められるわけなのだそうだ。
私は、甘いもの大好きなので、栗きんとんと伊達巻で、幸せになれる。
伊達巻は、できれば紀文のはちみつ入りのがいい。
お正月の三が日は、栗きんとんと伊達巻と、あべかわもちで、本当に幸せだ。
それから、欠かせないのが、先祖代々伝わる料理である。
いっぱんのお料理の本では見かけたことがないので、
もしかすると、うちの一家だけの料理かもしれない。
料理名をあえて書くとすると、「鮭の酒粕煮」となるのだろうか。
塩鮭の切り身を、酒粕を溶かしたお湯に入れて、しばらく煮る。
盛り付けるときに、鮭の上にトロリと酒粕をかける。
…これだけのものなのだが…。
子どものころ、お正月におばあちゃんの家に行くと、
必ずこれを出してくれた。なつかしい祖母の味、なつかしいお正月の味である。
大人になってからこれを作ってみると、
なべに酒粕をお湯で溶いたものを準備しておけば、
あとは塩鮭の切り身を入れて10分ほど煮てあたためるだけで、
すぐにおいしい料理が出せる。
人数がどんなに増えても、突然の来客でも出せる。
なつかしいおばあちゃんの味、このお正月は私が作って、お客さんに出そう。