2018年12月30日日曜日

連載・10 お料理エッセー・そら豆のひとりごと。 お正月のおせち料理。


連載・10 お料理エッセー・そら豆のひとりごと。

お正月のおせち料理。

「おでんの具はどんなものが好きですか?」

なんていうアンケートがある。

アイドルタレントも「がんもが好き!」などと答えると、

なんだか急に親近感が湧いてくる。



では「おせち料理はどんなものが好きですか?」となると、どうだろう?

気分的には、重箱に詰まったあのきれいな姿を見ないと、お正月の気持ちがしてこないのだが、

「好きかどうか」「おいしいかどうか」というと、率直に言って「どうかな?」。



私の友達でも、「あれはどれをとっても甘すぎて」と言う人もいるし、

家族でも、栗きんとんに黒豆に、昆布巻きも甘すぎて、どれをとっても、

「これが好き」とは、心底思えないようだ。



もともと、おせち料理は、年末年始には漁がなく、市場も開かれなくなるので、

新鮮な食材が手に入らなくなる、そして、調理の作り手たちもお正月には休みたい、ということで、

暮れのうちに3日分の食べ物を作っておいたようだ。



そうすると、日持ちが良いのは、砂糖をたくさん使って甘く煮たものである。

また、昔の時代は砂糖は貴重品であったので、

お正月以外には、甘いものが食べられなかったらしい。

それで、お正月のぜいたくとして、ああいった甘い料理が重箱に詰められるわけなのだそうだ。



私は、甘いもの大好きなので、栗きんとんと伊達巻で、幸せになれる。

伊達巻は、できれば紀文のはちみつ入りのがいい。

お正月の三が日は、栗きんとんと伊達巻と、あべかわもちで、本当に幸せだ。



それから、欠かせないのが、先祖代々伝わる料理である。

いっぱんのお料理の本では見かけたことがないので、

もしかすると、うちの一家だけの料理かもしれない。



料理名をあえて書くとすると、「鮭の酒粕煮」となるのだろうか。

塩鮭の切り身を、酒粕を溶かしたお湯に入れて、しばらく煮る。

盛り付けるときに、鮭の上にトロリと酒粕をかける。

…これだけのものなのだが…。



子どものころ、お正月におばあちゃんの家に行くと、

必ずこれを出してくれた。なつかしい祖母の味、なつかしいお正月の味である。



大人になってからこれを作ってみると、

なべに酒粕をお湯で溶いたものを準備しておけば、

あとは塩鮭の切り身を入れて10分ほど煮てあたためるだけで、

すぐにおいしい料理が出せる。

人数がどんなに増えても、突然の来客でも出せる。



なつかしいおばあちゃんの味、このお正月は私が作って、お客さんに出そう。