2018年12月30日日曜日

連載・13  お料理エッセー・そら豆のひとりごと。 うずら豆の甘煮。


連載・13  お料理エッセー・そら豆のひとりごと。

うずら豆の甘煮。

俗に「煮豆」と呼ばれている、大きめの紅い豆の煮ものである。

私はこの煮豆が大好きで、

母も私たちが子どものころは、よく作り置きをしてくれた。

ちょっとおなかが空いたときに、冷蔵庫のいつものお茶碗に入った「煮豆」を、

ふたつみっつつまんだものである。



今では、家庭で煮豆が作られることがあまりないそうである。

私自身も、あまり作らない。

なぜかというと、まず第一に、手がかかるからである。

うずら豆は、保存にはいいが、乾物と呼ばれる部類に入る。

切り干し大根や、ひじき、高野豆腐、もこの部類に入る。

これは調理の前に、「水にひたしてもどす」という作業がある。



「明日、うずら豆を煮よう」と思ったら、前の晩に、豆を水にひたして、

一晩置く。それから次の日に調理することになる。



昔の人は、とてもゆっくりしたペースで生きていて、

こういう調理方法が苦にならなかったのかもしれない。

現代人は忙しすぎて、「食べよう」と思った瞬間から、

待てたとしても3分だけなのかもしれない。

「作ろう」と思ってから15分で調理ができないと、

どうにも「やる気」が失せてしまうのだろうか。



以前にも、煮豆を作ろうと思って、夜のうちに水に豆をひたしておいたが、

翌朝、突然の来客があり、何時間も豆を煮ているような時間を取れなくなってしまった。

これではもったいない。

あしたの予定も「忙しい」の言葉で埋め尽くされているようなスケジュールノートに、

「煮豆」を書くのもしのびない。



いつか、時間の余裕ができたら、じっくりと、ことことと、豆を煮たいものだ。