2018年12月30日日曜日

連載・12 お料理エッセー・そら豆のひとりごと。 とうふの田楽。


連載・12 お料理エッセー・そら豆のひとりごと。

とうふの田楽。

大学生のころ、同じクラスの友達で、とても料理好きの女の子がいた。

大学に入れば、ほとんどの学生が、アパートでひとり暮らしを始めたから、

お料理が好きか、得意か、ということは、生活に大きな差をもたらしたかもしれない。

たとえば、昼食にしても、自分で作ってお弁当を持ってくる生徒と、

学生食堂でBランチを食べる生徒とでは、決まった仕送り額の中で、

ずいぶんな差が出たと思う。



私は、目玉焼きやお味噌汁くらいは作れたが「料理好き」とまで行かなかった。

勉強とクラブとゼミとで学生生活が精いっぱいだった。

その友達は、趣味でお料理とお弁当作りをしていたので、

契約を結んだ。

彼女が一食100円で、毎日お弁当を作って来てくれる、というのである。

これはすぐに飛びついて、毎日彼女に100円払って、

彼女の手料理を堪能した。



契約自体は、それぞれに学業が忙しくなって、途中で終わりにしてしまったが、

彼女のアパートに遊びに行ったときには、手料理をごちそうになって、

それが4年間続いた。

ときには、彼女が、何かの料理の研究に凝っていて、

その味見役を毎日することになる。



それが、「とうふの田楽」だった。

どうもとうふの焼き具合と、田楽味噌の調合の具合に「秘訣」がある、

というより彼女なりの「秘訣」を編み出したかったらしく、

毎日毎日、木綿豆腐を買って来ては、とうふを焼いていた。



味付け味噌も、赤味噌、白味噌、ブレンド、などなどあり、

とうふもオーブンで焼いたり、フライパンで焼いたりしていた。

田楽というと彼女を思い出す。



木綿豆腐を適度な厚さに切り、フライパンやオーブンで焼く。

このとき、ひっくり返しやすいように、竹の串を二本差しておくとよいらしい。

ほどよく焼けたところに、味のついた味噌を塗って、

もう一度、焼き目がついて軽く焦げがつくまで焼く。

これが、とうふの田楽である。

もっとも、彼女に言わせたなら、もっともっと奥深い「何か」を話してくれるのだろうけれど。