2014年3月14日金曜日

小松一郎法制局長官。

国政の場で今、小松一郎法制局長官の動向が、話題となっている。
国会ではなく、委員会の場において、不適切な言動があった、ということらしい。
その態度を見咎められて、民主党議員から、更迭を要求する声が上がっている。
これは、発言の内容そのもの、というよりも、態度が問題なのではないか、と私には思われる。
かなり、声を荒げて、怒鳴るように、顔と顔を突き合わせるようにして言い合いをしたようだ。
その内容も、「小松さんは頭の体操をしている」「それなら頭の体操のリストを出してさしあげましょう」というような、売り言葉に買い言葉、的な言い合いであって、とても大人の論争とは言えない状態だったようだ。

国会では、先日も、アントニオ猪木氏が、大きな声を出して、注意を受けている。
どうも国会も国政も、おだやかではないらしい。
私は思うけれども、それは、論議がとても白熱している、ということで、白熱するほどの国会というのは、むしろ好ましいものではないだろうか。
以前は、牛の歩みのような、国民がちょっとなんだか思うような場面だってあったのだ。

小松一郎氏が昨年8月に任命された、法制局長官、という仕事の内容は、私たち国民がどんなふうに政治を勉強しても、なかなか理解しずらい役である。
もともと、国会というのは、今ある法律の是非を審議したり、これから新しい法律を制定したりするために、審議して決議を行うところである。
この国会の審議に提出するための法案を、提出する前に、一度、目を通しておいて、「こういう法律なら問題ありませんよ」と認定するのが、法制局の仕事だそうだ。

この法制局が制定されたのが、明治の初めであるから、新しい法律を制定するために、まずは法案として国会に出せる内容なのかどうかを、あらかじめ「誰か」が、認定する必要があったのだろうと推測される。
なにしろ、明治時代というのは、民主化が始まったばかりのころなので、まだ法律というのがよくわからなかった国会議員が、とてつもない法案を、提出しようとしたのかもしれない。
あるいは、「だれか」にとって都合の悪い法案が、国会に提出されることが、あったのかもしれない、と推測される。
いずれにしても、かなり古い時代の制度である。

この法制局の長官に、小松一郎氏が抜擢されたのは、昨年の8月である。
小松氏は、国際法が専門であるようだ。
当時の日本の状況は、「すわ、戦争か」という時期であった。
アメリカやヨーロッパとの対応に、国際法に詳しい人材を、副大臣クラスの、総理大臣の相談役として、置く必要があったのではないか、と思われる。
そして、その役にふさわしい履歴が、小松氏にはある。
国際法の専門家として、スイス、リヒテンシュタイン、フランスで駐在して、外務の仕事を歴任している。
スイス、リヒテンシュタイン、と言えば、言わずと知れた、永世中立国である。
この永世中立国は、永世中立であるために、軍を持っている。

今の世界情勢のなかで、軍を持たないで中立を保つのは、現実的ではない、というこのものの考え方が、私は好んで考えていることである。

こうした、永世中立と軍隊を持つことの意義を、日本の社会のなかで、人に説明するのは、本当に、とてもむずかしい。
しかしこの社会状況のなかで、誰もセキュリティもしないで平和を維持できるのだろうか。

憲法において、「自衛」は保障されているが、どこからどこまでが「自衛」に当たるのか、それは、外からの働きかけによるものではないかと、私は思う。

私は、スイスやリヒテンシュタインの法律には詳しくないが、もしかすると、スイスの永世中立の基礎となる概念に、軍隊を持つことは「自国の自衛のためである」という考えが、あるのかもしれない。
それで、小松氏の考えとしては、日本が軍隊を持つ際に、憲法を改正する必要はなく、「自衛」の概念を変えていくことで、軍隊を持つことができる、ということなのではないだろうか。
わざわざ「国家安全保障基本法」を作る必要はない、ということではないだろうか。


集団的自衛権の解釈が話題となっている。
小松氏は、その「自衛」が、国際法的に見て合法であることを、日本社会で解説することに、とても苦心しているのかもしれない。

「自衛」の概念は、むずかしい。
無防備に、自転車の前カゴに、大金の入ったハンドバッグを入れておいて、その状態で街を歩いて、カゴからバッグを取られない社会が理想である、と夢見るのはたやすい。
しかし、現実的には、自転車のカゴのバッグは、ひったくりに会うのである。
ひったくりから「自衛」するのが、カゴにネットをかけておくことだろう。
そのくらいは自分でしておかないと、お巡りさんに訴えても取り合ってもらえない。

集団的自衛権の解釈は、「世の中の状態がどのくらいで、どの程度自衛しなければならないか」の現実直視である。
この世界情勢のなかで、軍隊を持つことは、集団的自衛権の範囲なのではないだろうか、と私は思う。

小松氏は、高い国際意識が、国会議員に伝わらなくて、ちょっとイライラしただけなんだろう、と思う。
共産党や民主党に、どんなふうに嫌がらせ発言をされても、がんばって高い国際意識を、貫いてほしいものだと思う。