マッサン、鴨居の大将と一緒にウイスキー造りをする!
なかなか動きの起こらない「マッサン」であった。
今回の朝ドラの、重要だと思われる視聴者に、お酒好きな男性陣がいる。
彼らは、朝ドラは「女子どもの観るもの」と知ってはいるのだけれども、その世界に飛び込む理由として、「酒好き」を看板にしている。
いつも楽しんでいるウイスキーが、どのように作られているのか。
日本で初めて作られたウイスキーにはのはどんな歴史があったのか。
サントリーとニッカの関係はいかに。
どっちのウイスキーをこれから愛好して行こうかどうか。
いかにお酒のうんちくを語ろうか。
…というところである。
しかし、物語は、政春とエリーの夫婦ものとなり、嫁と姑のドタバタ劇になったり、揺れているようである。
特に今週は、私は、男のサクセスストーリーとして、政春がどんなふうに、無職・夢職から、頭一つ抜けていくのか、というポイントを興味深く観ていた。
そして、「なるほど、そうなのね!」と本当に心から合点がいった、というかんじである。
それというのも、楽しい金曜ロードショーがあり、先日亡くなった高倉健さんを偲んで、「幸福の黄色いハンカチ」が放送され、私も手にハンカチを握りしめて、観ていたからである。
「幸福の黄色いハンカチ」は、子どものころ、北海道の地元映画として、観た。
その後、名作となり、何度もテレビで放送されていて、そのたびに観ている。
映画というのは不思議なもので、年齢や経験を重ねると、また視点がちがって見えたりする。
今回、見終えたあとに夜も眠れずに考えたのは、「3人の関係」というところであった。
ロードムービーであり、一台の車に何名かが乗り合わせて、その旅がストーリーになっている。
3人の出会いがあり、言葉があり、昼があって夜があって、心が少しずつ変化していく。
健さんの心が次第に開いていき、人生を語り始め、黄色いハンカチのいきさつを話して協力してもらうまでに、あるいは、健さんが夕張に行こうか行くまいか、この心の葛藤を乗り越えるために、とても重要だったのは、なにか。
男性2名、女性1名、というメンバー構成の「女性1名」というところではなかったか、と思った。
桃井かおりが演じる「朱美」という若い女性が、健さん演じる、刑務所帰りの無骨な男と、武田鉄矢演じる東京から来たふられた若い男性・欽ちゃんを、つなぐ役割をしているようである。
物語当初は、このぼんやりした内気ではっきりしない朱美という若い女性の存在が、わずらわしくも感じたものだが、だんだんと、朱美の役割の重要度を、感じるようになった。
男二人だけであったなら、なかなかできなかっただろうことを、朱美が、橋渡しをしているのである。
朱美は、時にはでしゃばらずに黙っている。
そして、時にはでしゃばりすぎるほどに、いろいろな行動を起こす。
この、「女のでしゃばり」が、男性たちの間には、とても大切で必要な、女性の役割であるように思えたのだ。
話を「マッサン」に戻せば、商売万歳の鴨居氏と、夢見る技術屋・政春の橋渡しをしたのが、エリーだった、というわけである。
確かに、それぞれ力もあり個性もある男性を、結びつけるのは、女性の役割であるのかもしれない。
この、エリーという妻に恵まれたので、政春は、「そのほかおおぜい」の夢見る失業者から、頭ひとつ抜け出せた、というわけである。
でも、どうしたら、こんなよい妻に恵まれるのだろう?
エリーや朱美の橋渡しは、天性の女性のおせっかい、というものだろうし、さじ加減の必要なものである。
こんなよい女性に恵まれたのは、政春の幸せ、というものなのかもしれない。
サクセスストーリーは、まだまだ先が長い。
女性の役割、というものも、考えさせられる、一週間であった。