2014年11月8日土曜日

NHK「マッサン」第6週「情けは人のためならず」感想。

失業者マッサン。
楽しみにしているNHKの朝ドラ「マッサン」。
主人公の政春が、やがて夢を実現して、国産初のウイスキー造りに成功する、サクセスストーリーである。
サクセスストーリーといっても、まだ途中である。
今週は、政春にとって、一番つらい時期ともいえる、失業・職探し・家賃払えず、という状態となった。
日本中で、世界中で、このような状況にある男性、そして妻も多いことだろうと思う。
ドラマの政春に考えさせられ、共鳴し、一緒にこのつらい時期を乗り越えていきたいものだ、と思ってしまう。

それにしても、仕事のない男、というのは、カッコ悪いものである。
今週の政春は、これでもか、というほど、「ダメ男ぶり」を発揮していた。
仕事はしたい、でもない。あってもなかなか続かない。
やりたいことも夢はある、でも、心が荒れてすさんでしまって、掛け声と理想ばかり大きくなるが、給料をもらえるような仕事に身が入らず、いわゆる「職を転々とし」という状況に陥ってしまう。
ウイスキーを売る酒屋に就職したりもするが、それも「こんな酒は偽物だ」とまで言ってしまうし、行きつけの居酒屋では、店員をするけれども、お芋も満足に剥くことができない。
家にいるしかないが、妻の作ったマーマレードまで食べつくしてしまう。
職がなくてもおなかはすく、いや、職がないからこそ、おなかがすくのだろうか。
「こういう人、いるいる」というかんじがしてくる。

仕事のない男は、本当に荒れてすさんで、情けないものである。
お酒を飲んで、大声を出したりもする。
世界中で、男性たちが荒れてすさんでいる地域は、どこも失業率が高い。
アメリカでも、裏町通りでは、職のない男性が、昼間から、ただ何をするのかわからないが、階段に座っていたりする。
その目つきは、うつろというよりも、こわいくらいに憎しみがあるように思う。

こういった状況は、長く続くことではないはずである。
夫が次の職に就くまでの、数か月か、長くても数年であるはずである。
こうしたときに、妻はなにをすればいいのか。
ドラマのなかでも、エリーは「わたし、どうすればいい?」と悩んでしまう。
経済的なことでは、妻が仕事を見つけて働いて給金を持ってくるのが一番、手っ取り早いように思う。
エリーも職探しをする。
しかし、夫の政春は「俺が働いて、妻を食べさせる」と、これも強い男性的なプライドである。
そう言われたら、妻もどうしたらいいかわからない。

でも、一番大事だったのは、妻のエリーの心が、政春から離れて行かなかったことかもしれない、と思う。
職を失くして、次の職もうまくいかないで、居酒屋でくだを巻いている夫を抱えて帰ってきたり、八つ当たりする夫、隠し事をする夫を、いつまで信じていられるか、愛していられるか、であると思う。

こんなに、「ダメ男ぶり」を発揮している夫に、愛想を尽かして、離婚だ、と言って、出て行ってしまう妻も、現実の世の中には、多いのではないだろうか。
また、ぶん殴られて涙にくれる妻も多いのではないか、と思ってしまう。
ストレス度の高い家族と一緒に暮らすのは、大変なことだと思う。

妻のエリー自身にも、コメがない、家賃が払えない、とストレスが重くのしかかっている。
夫婦して、ストレス度がとてもとても高い時期である。

特に、家賃が払えないのは、賃貸の住宅に暮らしたことのある人なら、多少は感覚として共感できるかもしれないが、「衣食住」の「住」が、不安定になるのは、人としての生活の基盤が揺らぐことなので、とてもつらいと思う。
住宅を追い出されたら、道端で寝るしかないのか、雨の日は、と思う。
暮らしとしても、人間社会の格差としても、一段かもっと、下がることになる。
政春は、実家に手紙を書くことも考えるが、実家では、政春の仕事や結婚に、とても反対している状況で、その反対を押し切っての結婚であるから、お金を用立ててもらうとしたら、親にすべての主義主張を折り曲げてしまうしかない。
「家賃が払えなくなる」が、意味するところは、主義や信念の崩壊であり、今度という今度は、本当にウイスキー造りは断念するしかない、となる。

政春は、仕事やお金と闘っているように見えるが、実際は「ウイスキー造りを、やめるか、続けるか」という自分自身の信念と闘っているのである。

こうした時期に、実際に妻のエリーがしたことは、「人間関係の和」というところが大きい、と思う。
夫の政春の人間関係は、住吉酒造の職場の人間関係でつながっていた。
妻は妻で、自宅とその近隣で、「ご近所づきあい」「女性たちのつきあい」という点で、人間関係を築いていた。
これが「情け」である。

今週のテーマは「情けは人のためならず」である。
エリーは、夫の政春が失業状態になる前から、女性として人として、いつも親切で明るく、ご近所のご婦人から人気があり、人のために尽くすところもあった。
妻が、女性として、人間関係のネットワークを築くのが上手であったことは、とても大切なことだったと思う。
また、エリーは、こういうときだからこそ、「人のためになれてうれしい」「誰かに必要とされてうれしい」と、言っている。
つらいときだからこそ、「人の役に立っている自分を確認したい」ものなのだろう、と思う。
それは、つらい心の、支えになる。

「エリーちゃんのために」と、玉子や、橙、などなど、差し入れが届く。
職の紹介もくる。
こうした人間関係は、ドラマでは昔の人情として描かれているけれども、現代の世の中にあっても、とても大切なことであると、私は思う。
「いざ」というときに、妻が、町内会で顔見知りが多かったか、家族のことを、お互いによく知りあっていたか、である。

日本でも、東日本大震災のときに、「ふだんからのご近所付き合い」が注目された。
「絆」という言葉もとても注目された。

夫が失業した、というのは、ある意味、天災のようなものであるが、そうしたときに、妻が作っていた絆が、とても力強く、基盤を支えたように思う。

こうした基盤のなかで、育まれて、守られて、仕事を失った男性は、次の仕事に就くまでの間を、過ごしていくのかもしれない。
そこで何か大切なものを得るのかもしれない。

私は、こうした、妻や女性たちが作るネットワークこそ、「家庭」と呼べるものではないか、と思っている。
男性も女性も、家庭のなかで生まれて、家庭の中で心を癒していく、そういったことは、とても大切であり、ふだんは目に見えないけれども、いざというときに、政春はこの絆の存在を知るのだと思う。

エリーが病気になったことは、とても印象的である。
その妻を介抱するのが、夫であることもまた印象的である。
夫婦してストレス度の高い時期に、どちらか片方が病気になることも、よくあることなのではないか、と思う。
介抱をする政春はまた、自分自身の心の傷をも癒しているのかもしれない。

来週も、まだまだ政春の、つらい時期が続くのだろうか。
そのつらい時期に得るものこそが、きっと、将来の成功に結び付く、大切な宝であったり、教訓であったりするのだろう。
来週もとても、楽しみにしている。
がんばれマッサン、エリー!!!




ホットドティーの作り方.

今週のドラマのなかで、エリーがお隣の子ども・健太くんの風邪を治すために、症状を軽くする「お薬」を作った。
風邪は、こうした身体を温める飲み物で熱を下げ、咳などの症状を軽くすることで、抵抗力が強くなって乗り越えることができる。
今年の冬は、ホットドティーで、風邪を乗り切りたい、と思った。
さっそくレシピをメモした。

ウイスキー  ワンショット
砂糖     ティースプーン半分
これをお湯で割る。

ドラマのなかで、エリーは、レモンとハチミツ、そこにウイスキーとお湯、というレシピを提案していた。
レモンがなかったので、橙で作ったマーマレードで、代用をしていた。
柑橘類は、喉の痛みを和らげるので、味を調えて子どもにも飲みやすくするために、工夫したものだと思われる。