2014年12月27日土曜日

NHK「マッサン」第13週「急いては事をし損じる」感想。

朝の連続テレビ小説「マッサン」も、半年の半分、三か月の放送を終えた。
これから一週間は、年末年始のお休みとなる。
次回の放送は1月5日だそうである。
ぜひとも見逃しのないように、録画予約をしたいものである。

今週の「マッサン」は、先週放送分から4年の歳月が流れていた。
「マッサン」をずっと見てきた人ならわかるが、ウイスキー造りには、樽で寝かせる熟成の期間が5年は必要ということが、すでに知識として前提になければならない。
しかし、鴨居商店の大将ことカモキンは、まだ熟成が4年目なのに、商品として出荷を命じるのである。
背景には、不景気があった。
商売というのは、面白そうだ、と思うことがある。
不景気もあれば、好景気もあり、ひとつの商店でも、大繁盛のときもあれば、全然うまくいかないときもある。
経済というのが、人の気分に左右される、というのも、不思議な現象である。
ともかく、あれだけ繁盛していた鴨居商店が、経営危機に立たされたのである。

ウイスキー造りは、とてもコストがかかるようである。
それは、作り始めてから製品化するまでに、歳月が必要だからである。
樽を寝かせてある間は、商品を寝かせてあるようなものである。
在庫であり、倉庫という空間を消費しているわけである。

ところで、今週の題名は「急いては事をし損じる」である。
「急がば回れ」とも相通じることわざだろうと思う。
世の中には、「急いてはいけない」ものごとが、たくさんあると思う。
たとえば、子どもの成長である。
這えば立て、立てば歩めの親心、ということわざもある。
しかし、子どもの成長がいくら早いといっても、心身共に成長するためには、それ相応の年月がどうしても必要なのである。
草をひっぱっても、伸びることはない。
それと同じように、ウイスキーの熟成を一年早めろ、と言われても、速くできないものはできないのである。

心も同じかもしれない。
傷ついた心に包帯を巻いて、その傷がひそかにじっくりと癒えていくまでには、自然治癒力と時間が必要である。
この時間を短縮しようとすると、今回の「マッサン」で描かれたような、失敗を呼び起こしてしまうのである。

政春には、本物のウイスキーがわかっている。
しかし、商売を本業とするカモキンには、本物を追求することのほかに、たくさんのお客様に販売する、というサービス業の精神がある。
これはこれで、商売の精神としては、本物であるだろう。

きょう、土曜日の放送では、「信念」という言葉が出てきた。
まったくやっかいな言葉である。
もしも世の中に、信念などというものがなかったら、もしも仕事にも人生にも、信念など要らなかったら、人生も社会も、とても楽になるにちがいない。

それにしても、今年の年末年始は、ウイスキーを口にする人も多いのではないか、と思うが、スモーキーフレーバーというのは、どういうものなのだろうか?
現存するニッカウイスキーは、アサヒビールに買収されているが、私が北海道にいたときから、経営悪化のうわさが絶えなかった。
今でも、サントリーウイスキーに比べると、ニッカのほうが、少数派だと言えるかもしれない。
それでも、100年経ってみれば、「信念あるウイスキー」のほうが、人気が出そうではないか。

政春VS鴨居欣二郎の勝負は、今年のお正月にかかっているのである。