2014年12月30日火曜日

ディズニー映画「アナと雪の女王」感想。--ネタバレあり。

2014年も、残りわずか、となった。
大みそかには紅白歌合戦も放送される。
紅白歌合戦は、その年の社会現象や話題になった言葉などを取り上げて企画が行われるので、一年を振り返りながら年越しをするのに、本当に楽しくてよい番組だと思う。
私も、今年の社会現象を、ひとつ取り上げてみたい。
話題となった映画として、ディズニー映画「アナと雪の女王」がある。
この映画はミュージカル仕立てとなっているが、劇中歌であり、テーマソングでもある「Let it go」は、とても人気の歌となった。
いわゆる「レリゴー」、日本語歌詞では「ありのままで」である。

この「アナと雪の女王」の感想を、ストーリーごとに、追いかけてみたい。
「ネタバレ」であるから、年末年始にお子さんと楽しもうと予定していたかたは、お許し願いたいと思う。

北欧、が舞台となったらしい。
ある平和な国に、王様とお妃さまがいらっしゃった。
そこには、小さな姉妹がいた。
姉がエルサ、妹がアナである。
この、姉のエルサは、生まれつきに魔法を使える体質であった。
手で触れたものが、雪のように凍りつくのである。

幼い姉妹たちは、こうした魔法の世界に暮らしているのかもしれない、小さな妹は、まだ眠い姉を起こす。
「ねえ、雪だるま作ろう!」
姉は起きると、両手を少し曲げて、輪を描くようにする。
そうすると、両手の間に、雪と氷の結晶が生まれて、それが小さな雪だるまになるのだ。
幼い姉妹は、こうして魔法で遊んでいた。

ところがある日、姉のエルサがこの魔法を使っているときに、小さな氷のかけらで、妹のアナの頭に傷をつけてしまう。
両親は心配して、山のドワーフのところに相談に行く。
ドワーフの長老の言うことには、氷のかけらが、頭に傷をつけたのでよかった、ということだ。
もしも胸に刺さったのなら、取り返しがつかなくなり、アナは、凍ってしまうというのだ。

姉のエルサの成長と共に日に日に強くなっていく魔法の力。
両親は、とってもいい人たちだったのだが、とても心配して、エルサの魔法を隠そうとする。
城じゅうの窓を閉め切り、お客さんもあまり呼ばないようにして、エルサを人目から隠そうとするのだ。

そうして、姉のエルサは、一人、部屋に閉じこもりきりになる。
妹のアナは、ドアの前で、「ねえさん、雪だるま作ろう!」と呼びかける。
これが、ミュージカルのなかでもとても人気の曲「雪だるま作ろう」である。
妹のアナの、天真爛漫で疑いを知らない心が、そのまま表れたような、かわいらしい呼びかけの歌である。

しかし、アナの声に、姉のエルサは答えることがない。
とても孤独なのだろう。

そしてある日、両親である王様とお妃さまは、ご公務のため、大きな船に乗って、外国へ行くことになる。
ところが、この船が難破してしまうのである。
ご両親が亡き人となった姉妹は、暗い城のなかで、寂しく暮らしている。

ある日、ここからが物語の大きな展開となる。
姉のエルサが、20歳となり、成人にともなって、王位を継承することになる。
そのお披露目晩餐会が行われることになる。
これまで閉められていた窓という窓が開け放たれ、人々が集まってくる。
他の国からも、お客さんがくる。
この晩餐会、舞踏会に、浮き立つこころが、妹アナの「うまれてはじめて」の歌によく表現されている。
こんなふうににぎやかに人が集まって、きれいなドレスも着て、もしかしたら、素敵な恋人に出会えるかもしれない。
姉が20歳であるから、妹は16歳くらいになっているであろうか、初々しい少女の気持ちが「うまれてはじめて」のときめきに表されている。

この舞踏会に出席してきた、ハンス王子。
アナはこの王子様と、恋に落ちる。
このときの歌もとてもかわいらしく素敵である。
ハンス王子の好きなものは「サンドイッチ」「わたしもよ」「わたしたち本当によく似ているわね」
ということで、すぐさま結婚の約束をする。
そして、ふたりそろって、姉のエルサのところに、結婚の報告に行く。

ところが、孤独と悲しみと憎しみでまいっていたエルサにとって、これは、ショックであった。
「絶対に許しません!」
怒りとともに感情が爆発すると、抑えていた魔法の力も爆発する。
そこいらへんのものをすべて凍らせてしまったエルサは、遠くの高い山を目指して、城を家出する。

このときに歌うのが、「レリゴー」である。
日本語に訳するときに、「ありのままで」と訳したために、歌としては素晴らしい歌になったのだが、その歌だけ聞くと、ストーリーの意味をはかりかねる状況になる。
個性を隠すのでなく、外見を繕うのではなく「ありのままの自分らしさを大切に生きよう」という意味だと、とらえがちである。
しかし、本来のストーリー上のエルサの意味は、もう魔法という欠点や悩みを、人々から覆い隠すのはやめよう、爪を隠すのをやめよう、という意味である。
魔法の力を抑えに抑えてきたけれども、「ダメならダメなりに好き勝手でいいじゃないか」と思う。
それで、家出をして、山のてっぺんに登り、思い切り魔法を使って、雪と氷でできた城を作る。
そして、国と街中を凍らせてしまうのである。
「レリゴー」は、こうした、悲しみと憎しみの発露の歌なのである。

残された妹のアナは、山の上まで、姉を説得に行くことにする。
姉によく話をして、街の氷の魔法をほどいてもらおうとするのである。
「お姉さんに話せば、本当に伝わるの?」という問いかけにも「大丈夫よ、だってあたしたち姉妹なんですもの」と、いたって楽観的である。
出発のときに、アナは、王女らしく、すでに婚約者になったハンス王子に、国のすべてを任せることを宣言する。

雪と氷に閉ざされた山で、アナは、山の男クリストフ青年と出会い、彼のトナカイ馬車で、エルサの氷の城に向かう。
ここからは、氷の冒険物語である。
雪は本当に美しい。
雪だるまの道化・オラフも、友達になる。
クリストフはカジュアルな青年で、アナと馬車で連れ立って行くところは、まるでドライブをするボーイフレンド、といったところだ。

しかし、やっとたどり着いた氷の城で、姉のエルサは、妹のアナの言う言葉を聞こうとしない。
そればかりか、氷のモンスターまで魔法で出現させる。
そのときに、妹のアナは、再び、エルサの魔法の氷で怪我をしてしまう。
その怪我は、今度は頭ではなく、胸に刺さった氷のかけらだった。
そのときから、アナの身体は凍り始める。
髪の毛からだんだん白くなっていく。
この氷を解かすのは、「真実に愛する人のチュー」だということである。
青年クリストフは、アナの愛する人って誰だったっけ?と考えて、婚約者・ハンス王子を思い当たる。
そして、街までアナを連れて帰る。

このあたりの、クリストフの表情はどこか悲しい。
見ていても、「真実の愛って、本当はクリストフのほうが、仲が好さそうなんだけど」と思ってしまう。

ここからが、ネタバレのどんでん返しである。
なんと、ハンス王子は、他国では13番目の王子で、王位を継承するには遠すぎる。
それで、エルサとアナの国にやってきて、まんまとアナと婚約し、エルサを亡き者にしようとするのだ。
つまり、アナの国の乗っ取りである。
王様になりたいのである。

まったくもって、前半のハンス王子のイケメンぶりを考えると、この裏切りはひどすぎる。
そして、氷の城に行って、エルサを捕まえてきて、手錠までかけてしまう。

すでに、アナの身体は凍り始めているが、街中も港も船までも凍っている。
その状況のなかで、追いかけっこが始まる。
逃げるエルサ。
そこを、本当にアメリカ映画らしいが、ハンス王子は、剣を持って追いかけるのだから、こわい。

まさに今、ハンス王子が、エルサに剣を振り下ろしたそのとき、アナが「わたしのお姉さんよ」と、エルサをかばう。
そして、本当にアメリカ映画らしく、ハンス王子の剣は、アナの身体に打ち下ろされるのである。
アナはその一打ちで、すべて凍ってしまう。

そのときである。
エルサはやっと気づいた。
姉を思う、真実の愛に。
妹がここまで姉を信じて守ってくれたことに。
エルサは一粒の涙をこぼす。
その涙が、凍りついたアナを溶かし始めるのである。

そして、魔法が次々に解けはじめて、街中も、港も、溶けていく。
街は、夏をとりもどすのである。

その後、エルサとアナは、仲良く暮らす。
エルサは、魔法のコントロールの仕方を覚えて、国民のために、スケートリンクを、魔法で作ってあげて、国民はフィギュアスケートを思い切り楽しむ。

じゃあ、真実の愛ってなんだったのだろう?と思う。
本当の愛って??

アナの「うまれてはじめて」のときめきが、大人の気持ちに育って行ったとき、そこに気が付いたのかもしれない。
それとも、アナが生まれつき持っていた純粋な心こそが、真実の愛だったのかもしれない。

本当にディズニーらしい、明るくて楽しくて、そしてアメリカらしい茶目っ気のある映画だった。
アナはクリストフに、新しい荷馬車をプレゼントする。
「飲み物入れつき」だそうである。

何度でも何度でも、見直したい映画である。
何度でも何度でも、歌いたい歌である。

エルサにとって、「ありのままで」とは、どういう意味だったのだろう。
明日の紅白歌合戦では、出場者全員で、歌われるそうである。
歌おう♪
歌い忘れのないように、年忘れである。
「ありのままで」私は来年もこれでいきたい。