2014年6月8日日曜日

NHK「花子とアン」第10週「乙女よ、大志を抱け!」感想。


6月2日~6月7日
この週に描かれるのは、「切ない恋愛模様」というところである。
まだまだ若い女の子、男の子、あるいは夫婦愛、というところもある。
まずは、花子の「腹心の友」蓮子の状況である。
九州にお嫁に行った蓮子の姿は、山梨の花子の姿と同時進行で描かれている。

蓮子は、お見合い結婚の相手と、どうにも合わないようだ。
最初から政略結婚であり、あまり期待はしていなかったかもしれないが、夫が女学校の設立を手掛けていることが、唯一の希望だった。
その夢を打ち砕かれて、自宅でたいそうぜいたくなサロンを開くようになる。
また、好きな短歌の歌集を、大金持ちだけが取り柄な夫のお金で出版させてもらうことになる。という筋書きである。
しかし、この蓮子と伝助の夫婦も見ていていろいろと、思うところもある。
一代で財産を築き上げた伝助にも、男性として成功者として、とても素晴らしいところがある。
字が読めない、教育を受けていない、これが伝助の劣等感だとあるが、それでも社会の中で男として立派に仕事を成し遂げている。
蓮子にはこうした、男として、社会の中で立派に仕事をしているという姿が、見えないようである。
そして、文学好きで芸術好きの蓮子にとっては、夫の伝助も、義理の娘も、「私が教育をしなおして差し上げます」という対象にしか見えないのである。
これでは、夫も家族も、見下げられていてかわいそうである。

自宅にクラシック音楽の演奏家を招いて音楽会を開いたときに、音楽にうっとりしている蓮子の横で、大きな音を立ててせんべいをかじりはじめた夫、この夫は、自分の存在を主張しようとしたのではないだろうか。
大切な夫よりも、目の前の音楽にうっとりしている妻であっては、どうにも妻らしいとはいいかねる。
これでは、伝助も立場がない。
どんな出会いであっても、夫婦として絆を育んでいこうと思えばできることではないだろうか、と私は思ってしまうのだ。

それでも、口げんかをするようなシーンでは、感情的になる蓮子と、頑固な伝助は、確かに似た者同士の夫婦にしか見えないところが、なんとも不思議である。
こうして、蓮子は、とうとう歌集を出版して、山梨の花子に送ることになる。

蓮子にとって花子との別れ、結婚をする際に、ちょっとやけになっていた蓮子は、花子に冷たくあたってしまったので、どうにも何か言い出しずらいところはあったのだろうが、歌集を贈るときには、ずいぶんとまた、挑戦的なお手紙をつけてきたものである。
「あなたはいつ、安東花子の名前で出版をなさいますの?」という口調である。
これもまた蓮子らしいところであるが、「腹心の友」は、ライバルでもある、ということだろうか。
こうして、蓮子は、何かつじつまの合わない家庭生活の中で、歌人という自分の道を苦しみながら見出していくようである。
炭鉱で事故が起こってここでは、夫の剛三の看病をしているので、蓮子の話はまだまだ先がありそうだ。

次に、舞台は山梨で、花子の末の妹、「もも」ちゃんの初恋と縁談である。
花子に背負われて小学校に「通った」ももちゃんも、もうそんな年ごろとなった。
ここへ、父親がまた、行商から帰ってきて、ずいぶんなお土産を持ってきた。
ももちゃんの縁談である。
相手は北海道で開拓をしている森田くんである。
これは、非常によい縁談である、と見ていた私は本当にうれしくなった。
さすが、行商をして全国を、広い世界を見てきた父親である。
これからは北海道の時代である、と演説をまくしたて、ももちゃんに北海道に行くことを勧めるのだ。

ところが、なんとしたことか、ももちゃんは、北海道に行きたくない、というのである。
どうしてだろう?
私なら絶対に飛んでいくと思うのだが…。

なんと、ももちゃんには好きな男の子がいたのである。
その男の子とは、花子の幼なじみである、朝市くんなのである。
その朝市くんは、花子のことを好きなのだが、花子にとっては、朝市くんは、幼なじみ、同級生、友達、ボーイフレンドにすぎない。
「異性」としては全然見ていないのである。
そして、花子は、ももちゃんの気持ちに気づいて、朝市くんとなんとか仲良くさせようというのだから、本当に困ったものである。
でも、中学校のときも、高校の時も、クラスメイト同志のなかで、こんな人間関係があったように思う。

そういうわけで、ももちゃんの初恋は成就せず、それでも、きちんと言葉で気持ちを伝えてから、北海道へと旅立つことになる。
私は本当によかった、と思った。
初恋くらいは、幼い時に誰もが体験するものだ。
それが近所のお兄さんだったりして、その初恋は、女の子の人生にとって、いわば小学校の初恋授業のようなものだ。
本当の、大人の女性としての恋愛、夫婦愛というのは、まだまだ先の話である。
北海道に行けば、きっといいことがある。
何しろ大陸気質で土地は広いし、雪は真っ白できれいだし、開拓は自由の気風があって男女平等だし、食べ物はおいしいし、第一、北海道に開拓に行こう、という男の人には、勇気と決断力と男らしいタフな根性がすわっている。
ぜったいにいい男性に決まっているからだ。

ももちゃんを送り出すときの、山梨の家族のようすは、本当に心あたたまる、素敵なシーンだったと思う。
そしてヒロイン花子にとっても、この週は、大切なことがたくさんある。
ひとつは、九州の蓮子から、先を越されて、歌集が送られてきたこと。
もうひとつは、遠く北海道へ渡る妹のももちゃんから「おねえやんの書いた物語が読みたい」と言われたことである。
先週では、学校の生徒から「花子先生の物語が読みたい」と言われている。
こうしたたくさんの人たちからの触発と、「あなたの物語が読みたい」という読者の声が、花子を突き動かすことになる。
またここで、一方は九州、一方は北海道、また生徒は住所知れず、というところも、大切な要素かもしれない。
というのは、言葉で話しては通らないほど遠くだが、活字になれば、花子の言葉が伝わる場所だからである。
活字になる、本にする、という意味を、強く思った花子なのである。

Girls be Ambitious !
私もこの、「ガールズビーアンビシャス!」でこれまでの人生をずっと生きてきた。
開拓精神、フロンティアスピリットで、人生に挑戦していきましょう!