NHK「マッサン」第21週「物言えば唇寒し秋の風」感想。

朝の連続テレビ小説「マッサン」も、終盤ラストスパートに近づいている。
視聴者である私たちのほうにも、少しずつ、春の気配が近づいてくるころである。
私はいつも、朝ドラを見ていて、季節を感じる。
春の卒業・新入学のシーズンである。

ドラマのほうでも、春らしい風景が起こる。
政春とエリーの、養女・エマの、初恋である。
時代背景は、第二次世界大戦中である。
戦争のさなかにも、若い人たちは出会い、悩み、恋をする。
むしろ、時代が厳しいからこそ、寄り添おうとするのだろうか。

若い二人の恋心と、そこに錯綜する親心、というところである。

政春の「男のサクセスストーリー」としては、この、一人娘の初恋に、政春自身の仕事上の大きな転機を含むことになる。
それは、後継者の育成である。

ウイスキーをブレンドする、ブレンダーという仕事は、一朝一夕に身に付くものではない、と俊兄からアドバイスされる。
「そろそろ、跡継ぎを考えては」ということである。

ウイスキー造りは、樽を何年も、時には何十年も寝かせて、未来に向かっていくものである。
政春自身が、超一流のブレンダーで、工場のウイスキーのブレンドはすべて自分で行っているのだが、その跡継ぎを育てなくては、せっかくのウイスキーの未来も育たない。

私は思う、政春も跡継ぎを考える年齢になった、ということは、老いることや、あるいは寿命ということを、視野にいれた、ということなのだろう。

自分自身が、必死で身に着けてきた、ブレンドの技を、教える若手を、必要としはじめたのである。

政春は、広島の実家の姉の息子が、北海道に勉強に来たがっていることを知り、ここに目星をつける。
エリーに相談すると「もっと身近にいるでしょ」という。
それが、ニシン番屋のクマさんの息子・一馬である。

一馬なら、政春としては長年の付き合いで、気心も気性も知れている。
真面目に働く青年である。
長く一緒にウイスキーの仕事もしてきた。
心のなかで「よし、一馬か」と思っているところに、娘・エマの初恋の相手が、一馬であることを知る。

本来なら、いや、一般的に言えば、一人娘の初恋に猛反対するのが、父親というものではないだろうか。
そこが、「マッサン」のドラマでは、父はほのかに賛成、母のエリーが猛反対、という図式なのである。
とても面白い。

政春の頭の中には、すでに跡継ぎ一馬の想定があるので、娘・エマとゆくゆくは結婚させてもいいし…という計算があるようだ。
また、父親として、会社の部下なら、「心配ない」ということもあるだろうと思う。

しかし、母親のエリーは、この話に激怒する。
母親の気持ちもわかる。
「女性として、もっと広い世界を見てからでも遅くはない」
(女性として、もっとたくさんの男性を見てからでも遅くはない)
という言い分である。
また、エリー自身の体験も、エマに語って聞かせるところはある。

しかし、エリーは、政春の、跡継ぎ問題に絡んでいることを見破って、一種・政略結婚的なエマの恋に、反対したのではないだろうか。

娘の恋、結婚、というのは、父親にとって、頭の痛い問題である。
娘の結婚相手を「選んであげる」「見極めてあげる」のも、男親の仕事だろう。

また、将来の仕事の後継ぎというのも、重要な課題である。

私が思うには、人は生きてきたからには、自分の体験を受け継ぐ若手を、何名かたくさん、育てておいたほうが、よいのではないだろうか。
それは、若手のため、というよりは、自分自身の人生のためでもあるかもしれない。

跡継ぎの育成は、長く遠い将来を見越した、大切な仕事である。