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NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」第24週「常子、小さな幸せを大事にする」感想。

NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」第24週「常子、小さな幸せを大事にする」感想。

秋風が吹き始める。
秋の稔りがある。
朝ドラでも、数々の稔りがある。
ひとつひとつ、人生の「名言」が生まれてくるのは、秋の季節なのかも、と思う。

「あなたの暮し」の商品試験に、「もの言い」がついて、新聞社の主催で、公開試験が行われた。
メーカーの人たちも集まって、洗濯機について、どんな試験をしているか、公開する。

視聴者の人々がみんなそうであったように、ひとつひとつの電化製品について、こんなふうに試験が行われていたことは、とても興味深い話だった。
常子の、永遠のライバルともいえる、赤羽根とも、直接対決となる。
アカバネの製品に、決定的な欠陥があったことは、もちろん、この勝負のポイントとなった。
しかし私は、赤羽根さんと、常子の、討論が、一番大事な、常子と「あなたの暮し」の、生き方ともいえる、「幸福観」対決だった、と思う。

赤羽根さんは、つらい戦争の体験から来た、自分自身の幸福観を持ち出す。
「お金持ちになること」「モノで豊かになること」これこそが、人々が求める幸福だ、というわけである。
確かに、戦中戦後を生活してきた人にとっては、経験からくる、必要性であるだろうと思う。
それはそれで、確かに、現実味のある、説得される理論である。

対して、常子は、「私たちは、小さな幸せを大事にしたい」と言う。
「小さな幸せ」の例として、読者からのアンケートカードの話をする。
「新しい冷蔵庫が家に来たときに、夏に冷たいジュースが飲めるのを、楽しみしていました」という話である。

夏に冷たいジュース。
私もこの夏は、我が家の冷蔵庫に、冷たいグレープフルーツジュースを冷やしておいて、暑くてたまらなくなったとき、物書きの合間に、キッチンに立っては、ガラスのコップに、冷たいジュースを注いだものである。
確かに、とても幸せで、でもそれは、とてもささやかで小さな幸せだ、とも思う。

この「小さな幸せ」を、日々、積み重ねていけたら、それだけで充分幸せな人生を送っていける、とキッパリ言い切ることもできそうだ。

私は、独身時代の「将来の夢」というと、こんなふうに、ささやかで小さな幸せの光景を、求めていた。
結婚して、小さな台所を持って、スープを何時間もコトコト煮ながら、台所の隅のテーブルで、小さな手帳に、ささやかな詩を書く。
そんな時間を大切にしたい、というのが、夢だった。

その「ささやかな幸せの時間」のために、どれだけの条件が必要か、考えてみた。
この光景を思い浮かべるとき、キッチンの窓の外には、砲弾が落ちていてはいけない。
スープに入れる、玉ねぎもニンジンも、農薬が不必要に使われていない、安心安全な食材でなくてはいけない。

スープを煮る鍋は、金属が溶け出すようではいけないし、スープを置いたストーブは、火災に対して安全対策をとっていなければならない。

部屋の中は、暑くなく、寒くなく。
清潔な衣服を着ていて、テーブルの上は清潔に整理整頓されていなければならない。

そして、できあがった、おいしいスープを一緒にいただくために、誠実でたくましい夫がいなければならないし、素直で聞き分けのよい子どもが、ふたりはいなければならない。
そして、夫と子どもたちが、私の作ったスープを「おいしい」と言って、食べてくれなければならない。

小さな、ささやかな光景であるけれども、その小さな絵を作り上げるためには、たくさんのたくさんの、条件が必要なのだ、と思った。


私が、政治や経済に関して、関心を持って、そこに参加しようと思ったのは、こんなささやかな小さな絵を完成のために、少しでもがんばりたい、と思ったからである。

家の中の整理整頓くらいは、個人の努力でできることかもしれない。
けれども、安全なストーブ、安全な野菜、安定した平穏な社会、というのは、決して個人的な努力だけでは、完成できないものだ。
政治、という社会活動が、必要なのである。

「小さな幸せ」の光景には、平穏で安全な社会のなかの、小さな家、というたくさんの条件が必要なのだ。

私はそうした意味で、女性が、小さな幸せのために、家庭と、愛する家族のために、社会参加を積極的に行ってほしいものだ、と思う。

というわけで、常子の人生のテーマ、「あなたの暮し」のテーマが、ここで、描かれた、一週間だった。
小さな幸せを大事に大事に積み重ねていく、その一助になれば、という「あなたの暮し」が、たくさんの読者から支持されたのは、常子の「小さな幸せ」が共鳴を生んだ、ということだと思う。

常子にとっても、私たち視聴者にとっても、とても大切な一週間だった、と思う。
大事なことに気付かせてくれてありがとう。

物語もラストスパートである。
大切に見守っていきたいと思う。