2014年7月8日火曜日

NHK「花子とアン」第15週「最高のクリスマス」感想。

NHKの通称・朝ドラ「花子とアン」がとても注目されているようだ。
朝ドラというと、常にそうであるが、ヒロインが恋愛をして、結婚にたどり着くまでの経緯が、一番盛り上がるエピソードである。
今回のシチュエーションは、これまでの朝ドラになく、複雑な事情がある。
それで、これから花子はどうなるのか、英治はどうなるのか、ここでダークホースの武はどうなるのか、というたいへんな話題が持ち上がるのである。
手堅いところは朝市くんなのだが、どうにもそうはいかないところも、朝ドラのむずかしいところだ。
今回の結婚問題は、村岡英治氏の、離婚、再婚、恋愛、なんといったらいいのかいろいろな事情が重なっているところも、重圧である。
英治はどんな気持ちでどんな判断をするのか、また、この苦悩を抱えた英治に、誰がどのようなアドバイスや支援をするのか、また花子がどう振る舞うのか、とても難題なところである。
きょう、火曜日まで観たところでは、英治の亡き妻の形見を抽斗に持っている、英治の弟・郁弥、そして、英治のことを、本心から心配して温かく見守る、父親と、出版社の仲間たち、こうしたところが、とても心温まる様子で描かれていると思う。
ここで、父親が、長男の再婚に関して、なんらかの口出しや手配をしそうでもあるし、また、弟の郁弥が、兄の感情を引き受けてくれているところもある。

私が予想するのは、やはり何か、弟の郁弥が、亡き妻(義姉)から、なんらかの遺言を託されていたというあたりである。
亡き妻の形見が、聖母子像であったことから、キリスト教への信仰心がうかがえるものであり、そのあたりで、香澄が何か言い残したこと、あるいは、弟の郁弥に言い残したことがありそうである。
また、父親も、親の直感や人生体験から、英治に新しい人生に踏み出してほしいところがあり、力強く背中を押しているようでもある。

それにしても、英治の心は、亡き妻への、「亡くなった」という思いでいっぱいなのではないかと思う。
幸せにしてあげられなかったように思ったり、自分の責任であるように思ったりするかもしれない。
まさに「愛と死を見つめて」の状況なのである。

私は、子どものころ、私の母親がとてもストーリーテラーなところがあって、たとえば夏休みに、母がお洗濯をしながら、夕食の支度をしながら、いろいろな話をしてくれたものだった。
母は、たとえば「愛と死を見つめて」の、ミコとマコの話を、三日もかけて、語ってくれるのである。
私は真剣に聞き入っていた。
(このあたりはネタばれになってしまって、申し訳ないかもしれないが)
ミコ、が不治の病にかかったところでは、ミコの気持ち、マコの気持ちを思いやり、愛というものの素晴らしさを思った。
また、ミコが先に亡くなったところでは、本当に涙を流して、母のエプロンにしがみついたものである。
「死ぬ」ということは、とても恐ろしいことだと思った。
もう二度と、マコに会えなくなるのが、死ぬ、ということなのだ。
そして、感動の涙に泣きくれた。

しかし、翌日にも、母のお話は続くのである。
なんと、マコは、ミコが亡くなってから、別の女性と結婚したのである。
目を丸くして、裏切りとか、何かそういう心情である私に、母は言った。
「あのころ、マコくんへの風当たりがとても強くて、純愛を貫くべきだ、とか、がっかりした、とかいろいろなことを言われて、マコくんがかわいそうだったよ。
でも、あとに残された、マコくんにだって、人生はあって、まだまだ若いのよ。
ミコちゃんは、先に亡くなってしまったでしょう。
マコくんも、新しい恋人と出会って、素晴らしい人生を始める権利があるでしょう。
マコくんは、ミコちゃんをとっても好きだった、でも、人生は続いていく、それでいいでしょう」

母は、いろいろな話をしてくれた。
たとえば、今思い出したが、芸能人のかたの結婚や離婚や死別に関しても、いろいろな考えや思索を語ってくれた。
伊集院静、という作家がいて、以前、女優の夏目雅子さんと、ご結婚されていた。
その後、夏目雅子さんは、突然に不治の病にかかり、とても若くして、亡くなった。
日本中のファンがとても悲しみ、何年たっても、何十年経っても、夏目さんの写真を追悼などで、表すものである。

そうした状況を見て、私の母が言うのは、「これでは、篠ひろ子さんが、かわいそう」というのである。
「いつまでも亡くなった人のことを言っていて、生きている、今、奥さんである篠さんの立場も心情も、思いやることがないのね。今生きて、これからも生きて幸せになっていくことは、とても大切なことでしょう」
というのである。

これは私ひとりの、あるいは、私の母の、思い入れであるが、村岡英治さんにはとてもむずかしいことかもしれないが、気持ちの整理というのはあると思う。
村岡英治さんにも、生きて幸せになる、ということを、大切に感じてほしい、そして、いろいろに人生の決め方をして、前に進んでほしい、と思うものである。