2017年4月30日日曜日

NHK連続テレビ小説「ひよっこ」第4週「旅立ちのとき」感想。

今週の「ひよっこ」は、とうとうヒロインが、故郷を旅立って、東京へ向かう場面となった。
朝ドラでは、4月から9月の前半期では、地方出身のヒロインが、ストーリーの途中で、必ず東京に上京することになっている。
撮影上のさまざまな条件にもよるのかもしれない。
けれども、今回の「ひよっこ」では、「殻を破る」ということがテーマとなっているので、今週は、ヒロインの人生の、一回目の「殻破り」が行われた、ということかもしれない。
きっと、何回もこうして「殻破り」が行われるのだろう。
考えてみれば、生きていくというのは、殻破りの連続かもしれない。

観ている私たちにとっても、「そう考えてみれば、あのときが私の、殻を破ったときだったのだ」と思い出されるように思う。
「私も故郷を出立するときには、確かにあの場面があった…。」
そう思った人も多いのではないだろうか。

朝ドラ15分の間に、涙をさそうシーンが毎回毎回描かれる。
「人間っていいな」と思わせてくれる、幸せなドラマである。

ところできょうは、主題歌である「若い広場」について、少し書いてみようと思う。

作詞作曲、そして歌は、桑田佳祐さんである。

☆ーーー

若い広場

pon pon pon …
愛の言葉をリル
シャイなハートがドキドキ
あの日観てた"サウンド・オブ・ミュージック"
瞼閉じれば蘇る
幼い頃の大事な宝物だけは
ずっとこの胸に抱きしめて来たのさ…Ah ah


夜の酒場でLonely
あの娘今頃どうしてる?
さなぎは今、蝶になって
きっと誰かの胸の中

若い広場 愉しドラマ
夢膨らむ 青い空

肩寄せ合い 声合わせて
希望に燃える 恋の歌

☆ーーー
「ポンポポン」「リールー」「ドーキドキー」と、音感のよい言葉が次々に飛び出してきて、桑田佳祐さんの独特の歌い方とともに、耳になじむ楽曲である。
…と思っていたら、私のまわりの人たちにとっては、「意味わかんない」という感想があった。
それで、この歌について、いろいろ考えてみた。

桑田佳祐さんといえば、以前、サザンオールスターズというバンドを組んで、いっせいを風靡した。
デビュー曲の「勝手にシンドバッド」では、「砂まじりの茅ヶ崎」と歌って、国語審議会のえらい面々から、「意味がわからない」とさんざんやっつけられたものである。
それが今は、茅ヶ崎の名誉市民になっている、という話なので、やはりたくさんの人たちから支持されることは、偉大なことだ、と思う。

そういうわけで、とても桑田さんらしい曲になっている。
ややこしい理論をつければ、「わらべ歌」のように、意味のない言葉をつなげて、ナンセンスな歌詞をつなげて、それを楽しむ、音感の楽曲である。
昨年から、インターネット動画を通して、世界的に話題になった、ピコ太郎の「PPAP」も、わらべ歌のような音感が、人々の耳になじんだ、ということである。
「アッポーペン」と、「ポンポポンのリル」は、なんだか似ているような気がしませんか?

と前置きしたところで、あえて、あえて、この歌詞に、通解をつけてみよう、と思います。

桑田さんの歌は、絵のようになっている、と思います。
画用紙に、まず、「愛の言葉」を描きます。
マンガの吹き出しのような形を描いて、「愛してる」と書き入れてみましょうか。
次に、「リル」を書きます。
これは、昭和の初期に流行した、津村謙さんの「上海帰りのリル」から引用したものではないか、と思われます。
「リル」というのは、「my little darling」の略だそうです。
恋人の女の子を呼ぶときの愛称ですね。
可愛い女の子を描いてみましょう。

次に、「シャイなハート」を描きます。
これは、男の子の絵でしょうか。
この男の子の胸が、「ドキドキ」しています。

そんなふうに、歌詞に出てくる言葉を、ひとつひとつ、絵にして、画用紙に並べていくと、風景が描かれて、人が描かれて、気持ちが描かれていきます。

そのあとに、「夜の酒場でlonely」が出てきますので、時間と空間が転換しています。
やはり、理解しようとすると、難易度の高い歌かもしれないですね。

では、たくさん言葉を足して、書いてみます。

♪ ぼくたちは、若いころ みんなでポンポポンと歌っていた
あの歌声が聞こえてくる
愛の言葉を僕に告げてくれた可愛い女の子リル
僕はとても恥ずかしがり屋なので、胸がとてもドキドキした

あの若いころ、観ていた映画「サウンドオブミュージック」
大人になった今も、瞼を閉じればありありと思い出すことができる

若いころ、幼いころの純情だったころに大切にしていた、
昭和の思い出は、
大人になった今も、なくさずにこの胸にある

大人になって、夜の酒場でひとり、お酒を飲んでいる
そして思い出す。考えてみる。
若いころ憧れの恋人だったあの女の子は今、どうしているだろう?

さなぎだった少女は、今は大人の女性へと脱皮して、
とても美しくなっていることだろう。
そしてきっと、幸せな恋をして
僕ではない誰かの腕の中で、眠っていることだろう

若いころを思い出す
昭和の時代は、若い人たちが集まって、恋や友情のドラマを繰り広げたものだ。
とても楽しかった
将来への夢が、あの青い空のように広がっていた。

あの若いころ、友達や恋人と肩を寄せ合って
みんなで声を合わせて、同じひとつの歌を歌っていた。
僕らは、希望に燃える恋の歌を歌っていた。
恋をしていた。
ぼくはとてもなつかしく思う。
本当に素晴らしい青春時代だった。


☆ーーー

かなり「意訳」を試みてみましたが、こういう内容の歌であるように思って、私は楽しんでいます。
ドラマの「昭和」を意識した、たくさんのレトロな言葉が散りばめられていて、すばらしい楽曲になっている、と思います。

リズムに合わせてポンポポン。
毎朝楽しく、一日を始められる、懐かしく愉快な歌である、と思います。
さあ、肩寄せ合って、歌いましょう♪