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NHK連続テレビ小説「ひよっこ」第5週「乙女たち、ご安全に!」感想。

五月にはいった。
新緑のまぶしい季節である。
朝ドラ「ひよっこ」は、ゆっくりと着実に、お話を続けている。
まるで季節の歩みのようにゆっくりと、高校三年生から、卒業、就職、と歩んできた。

今週は、集団就職で上野駅に着いたところから始まる。
すでに就職口が決まっていたので、その会社に着いて、寮に入る。
ヒロインみね子の働く「向島電機」は、トランジスタラジオを作る工場である。
当時、トランジスタの発明によって、ラジオは、「一家に一台」から、「ひとり一台」の時代にはいった、ということである。

とても高価なラジオだったらしいのだが、その分、みね子たちのお給料もとても高かった、という話である。

この向島電機はアイルランドに工場を持つということなのだが、NHKなりにいろいろ「仕掛け」があるようである。
というのは、アイルランドに工場をもったのは、SONYだった、ということである。
それから、「トランジスタ」ってなんだろう?と調べてみると、これは、今、話題の、「半導体」なのだそうである。

電流と電圧を調節する機械で、このトランジスタの発明によって、ラジオもテレビも小型化され、パーソナルコンピューターでも、スマートフォンでも、使われるようになった。

みね子はまさに、日本の高度経済成長期を背負って、その真ん中で働いている、というわけである。

初めての休日まで一週間を、そのまま一週間の放送で観てきたことになる。

それにしても、高校卒業、就職、というのは、人生の激動の時期である、と思った。

私は、運転免許の取得のために、昨年秋から、自動車教習所に通っていた。
そして、いろいろなことを考えた。
運転免許があると、人生が変わる、と教習所の指導員の先生も言っていた。
行動範囲が広がると、出会う人も変わるし、就職口も変わってくる。
免許のない人には見えない景色が、免許のある人には見えるかもしれない。
老後だって、きっと変わってくる。

免許を取るということは、今後の人生を変えている、ということなのである。

しかし、昨年秋から今年の春にかけて、高校を卒業して就職、進学する、高校三年生たちは、「人生の選択の時期である」ということなど、何も知らずに、スイスイと免許を取得していく。

就職先も、そこで出会う人たちも、これからも人生に大きな影響を与えてきて、それはもう、変更不可能な選択になるかもしれない。
選択の幅は大きいが、その分、不可逆性の大きい選択を、いくつも、いくつもしているのが、高校三年生の春だ、ということになる。

「ひよっこ」の一週間でも、寮に入り、先輩に出会い、仕事仲間に出会い、ルームメイトと出会い、仕事と出会い、新しい人生に、どんどん出会っていく。

大人の私たちだったら、住む場所が変わって、仕事が変わって、寝る場所が変わって、枕が変わって、ルームメイトが変わって、そんな一週間は、リポビタンDでもないと、やっていけないかもしれない…。

東京に着いた、その日の夕ご飯は、カレーライスであった。
一口食べて、「おいしい」という。
「東京の味がする」という。

私も、北海道から東京に着いたそのときには、本当にそう思った。
飛行機のなかでは緊張して、お姉さんのくれるジュースも口にできなかった。
羽田に着いてほっとして、すごくおなかが空いて、でも座るところも食べるところもなかなかなくて、やっと見つけた、おしゃれな店では、すごく高くて…。
それでも、アイスコーヒーとサンドイッチを注文して、一口いただくと、それは、まさに、東京の味がした。

パンは北海道のパン屋さんよりも、薄くて、四角くきれいに切りそろえてある。
マスタードも、べったりたっぷりではなくて、うすくきれいに、味が整うように塗ってある。
ハムも高級品で、レタスも薄くてしんなりしている。

「東京の味だ」と思ったとき、突然心細くなって、羽田空港の壁に立ちすくんで、あたりの喧噪を見渡した。
そして、しばらくしてから「東京に負けるものか」と思って、ぎゅっとこぶしを握り締めて、モノレールの切符を買った。
私の、東京での第一歩の勇気が、モノレールの切符だった。
一歩踏み出す勇気が出せて本当によかった。
励ましでもあり寂しさでもあるのが、「東京の味」だと思う。
みね子も同じことを思ったのだ、とドラマを観ていて、思った。

これから、ヒロインみね子は、どんなふうに、人生の選択の時代を、選んでいくのだろう。
それは、偶然かもしれないし、大人が用意したものかもしれない。
そして、自分で選び取るものでもあるだろう。

人生の奔流のなかで、みね子が、明るい笑顔と、豊かな感情で、東京を生きていくことが、これからのドラマでも、とても楽しみです。

これからも楽しみに、観ています!!!