自民党派閥の裏金事件の捜査以降、鳴りを潜めていた東京地検特捜部。そんな中、日本最強の捜査機関が6月5日に逮捕を発表したのは、弁護士を相手に詐欺を働いたとされる人物だった。この男、一体どんな“大物”なのか――。
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「共済の掛け金に充てる」と虚偽のメールを送信
特捜部が詐欺の疑いで逮捕したのは、笹沢知夫容疑者(63)。東京都新宿区で会計事務所を設立し、活動していた税理士だ。
司法担当記者が解説する。
「笹沢は2022年4月から11月にかけて、税務顧問契約を結ぶ法律事務所の弁護士に対し、『共済の掛け金に充てる』などと記した虚偽のメールを次々と送信。自身の口座に金を振り込ませ、計約8700万円を詐取したとされます」
騙されてしまった弁護士の数は実に34人。しかも、全員が同じ事務所に所属しているという。看板に傷がつきかねないほど大規模な詐欺被害を受けたのは、どこの事務所なのか。さる法曹関係者が打ち明ける。
「特捜部は発表していませんが、被害に遭ったのは『森・濱田松本法律事務所』(以下、森・濱田)の弁護士たちなんです」
森・濱田と言えば、日本の法曹界をリードする“四大法律事務所”の一角。所属弁護士数は751名にも上る(今年6月現在)。ヤメ検弁護士も多数在籍しており、証券取引等監視委員会の委員長を務めた長谷川充弘氏や、前検事総長の林眞琴氏も所属している。
「それゆえ、今回の詐欺事件を警視庁ではなく東京地検特捜部が手掛けているのは、林さんが古巣の検察に一声かけたからではないかと噂されているのです」(前出・司法担当記者)