岸田文雄首相は21日、今国会の閉会を控えて首相官邸で記者会見を開いた。秋に経済対策の策定を目指し、年金世帯や低所得者への給付金支給を検討すると明らかにした。これに先立ち物価高対策として電気・ガス代の補助を8〜10月に追加実施し、ガソリン補助金も年内に限り続けると表明した。
首相は9月に自民党総裁の任期満了を迎える。秋以降にわたる政策を多数打ち出し、政権運営を引き続き担う強い意欲をにじませた。首相は2年半の政権運営の評価を問われ「今の時点で評価するのは道半ばの課題を考えると適切ではない」と答えた。
目標として掲げる「デフレ型経済から成長型経済への移行」について「移行の兆しは明確だ」と指摘した。この兆しを着実にするため、中小企業の価格転嫁の徹底やグリーントランスフォーメーション(GX)への投資促進などの支援を拡大する。
物価高対策としては早急に着手可能で即効性のある対策と、秋に策定を目指す経済対策の2段階で取り組むと説明した。
第1弾は電気・ガス代の補助やガソリン補助金の継続が該当する。具体的な内容は与党と調整する。これらの措置による消費者物価指数の押し下げ効果について首相は「年末まで月平均0.5ポイント以上とすべく検討する」と訴えた。
第2弾の経済対策で想定する給付金の対象は「物価高の中で食費の高騰などに苦しむ年金世帯や低所得者世帯」と明言した。重点支援地方交付金の拡充を検討する方針も示した。補正予算の編成を視野に入れる。
政府は現役世代の負担軽減のために年金水準の抑制に取り組んでいる。年金世帯への給付が前例になる懸念や、年金制度との整合性が論点になる。
電気・ガス代の補助は「酷暑乗り切り緊急支援」と位置づけた。首相はガソリン補助金を含め「脱炭素の流れに逆行し、いつまでも続けるべきものではない」と言及した。当面の対策が必要な理由として「日本のエネルギー構造の脆弱性」を挙げた。
原子力発電所の稼働地域と非稼働地域で電気代に最大3割の差があると指摘し「安全が確認された原発を速やかに再稼働させる」と掲げた。年内をめどにエネルギー供給や産業構造、産業立地に関する国家戦略を策定する。
名目GDP(国内総生産)が「40年ごろに1000兆円程度が視野に入る」と述べた。名目GDPは国内で生産されたモノやサービスの付加価値の総額で、経済成長と物価上昇のどちらも押し上げ要因になる。内閣府によると、23年度は596.5兆円だった。
首相は「30年代以降も実質1%を安定的に上回る成長を確保しなければならない」と話した。
改正政治資金規正法が19日に成立した。首相は政策活動費の支出をチェックする第三者機関について「施行日の26年1月1日を念頭に早期の設置に向けて議論していく」と発言した。
自民党総裁選への出馬意向を問われ「先送りできない課題にまずは取り組み、仕事で結果を出すこと以外は考えていない」と回答した。