システム障害、端末850万台が影響 米国ではなお欠航も:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2046Z0Q4A720C2000000/
シリコンバレー=渡辺直樹、ニューヨーク=川上梓】米マイクロソフトは20日、世界各地で発生した大規模システム障害について、約850万台の基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」を搭載する端末が影響を受けたとする推計を発表した。システム障害に伴う航空各社の遅延や欠航は正常化しつつあるが、なお世界で3万便弱が遅延している。
大規模障害はセキュリティー大手の米クラウドストライクが日本時間の19日、更新ソフトを不具合を含んだまま世界に一斉に配信したことが原因となった。マイクロソフトは850万台は全体の1%に満たないが、広範囲に経済的な影響が広がったと分析した。
米ソフト会社のインテロスはマイクロソフトやクラウドストライクの67万4000以上の顧客に直接影響があったとし、41%が米国だったとの調査を明らかにした。間接的な影響も含めると、業務が中断するリスクは顧客数で4900万以上に及んだとみている。
米国など各国の航空各社の運航は正常化しつつあるが、20日も各地で影響が続いた。航空調査データのフライトアウェアによると米東部時間の20日午後5時時点(日本時間の21日午前6時時点)で世界で約2万8千便が遅延し、約2千便が欠航している。利用客の多い週末に重なったこともあり、正常化にはなお時間がかかりそうだ。
同時点の米航空会社の欠航率はデルタ航空が25%、ユナイテッド航空が13%。アメリカン航空は欠航便がなくなった。
デルタ航空は20日、「業務の復旧作業を続けている」とコメントし、引き続き、最新の運航情報を確認するよう顧客に呼びかけている。米CNBCによると航空貨物も遅延が続き、正常化には数日から数週間かかる見通しだ。
ピート・ブティジェッジ米運輸長官は20日、一部の航空会社が、欠航した便の顧客に対して、今後の搭乗便に振り替えができる権利(フライトクレジット)のみを提供しているとし「便が欠航し(顧客から)新たな予約が行われない場合、顧客は速やかに返金を受ける権利がある」と航空各社に注意喚起した。
バイデン政権は4月、航空各社や航空券の代理店に対し、欠航や大幅な遅延が起きた際、顧客に即時に返金することを義務付ける規則を公表している。
日本では航空便の運航はほぼ復旧した。日本航空で起きていたシステム障害は19日中に復旧した。一時国際線の航空券の予約など全サービスが利用できなかったが、20日は通常通り使えるようになった。
クラウドストライクはすでに修正ソフトを配信したが、再起動と手作業による修正が必要な端末も多く、一部の企業では復旧を終えていない。偽の修正ソフトを配信するサイバー攻撃も起きており、米国や英国、オーストラリアの当局は注意を呼びかけている。
今回の問題は、クラウドストライクが十分な品質チェックなしにソフトを全世界で自動更新したことが引き起こした。
テキサス大学サンアントニオ校のマックス・キルガー教授は「この種の深刻な障害は今後も増えることが予想される。ソフト会社が試験を厳格化するように求める規制も必要になるかもしれない」と指摘した。