2024年7月20日土曜日

🇻🇳ベトナム共産党最高指導者

 

ベトナム共産党の最高指導者、グエン・フー・チョン書記長が19日に死去した。1月に体調不良説が流布して以降、公務での登場機会が激減していた。党は18日に「書記長は治療に専念する」との声明を発表。ベトナム各地で予定されていたイベントが相次いで中止となり、国民は静かに「その時」を待った。

ベトナム人の琴線に触れる政治家だった。徹底した反腐敗キャンペーンで次々に党幹部や企業人を粛清する強権を振るいながらも、最後まで国民の支持を失わなかった。質素な身なりと清廉なイメージは、「ベトナム建国の父」として今も絶大な人気を誇るホー・チ・ミンと重なるところもあった。

最後の大仕事は6月に首都ハノイで迎えたロシアのプーチン大統領との会談だった。旧ソ連(現ロシア)での留学時代を懐かしむ一方で、椅子に腰掛けたままプーチン氏との握手に応じるなど、体調不良は誰の目にも明らかだった。

党機関誌の編集長も務め、社会主義を重視する保守派で知られた。2011年に書記長に就くと、経済開放路線の幹部を党中枢から遠ざけた。経済重視の政権運営が党の規律や倫理観をゆがめ、汚職が横行する下地になっていると考えたのだろう。

国内でチョン氏が掲げた汚職撲滅に反対する声は少ない。一方、不正疑惑をかけられれば党序列2位の国家主席でさえ失脚を免れない粛清の嵐が、役人の萎縮につながり、経済成長の足かせになっていることは否めない。

チョン氏個人の影響力が強くなりすぎ、10年を超える異例の長期政権の弊害が目立ち始めていた。「(26年の)任期満了まで私たちにはやるべきことがたくさんある」。7月4日に党内の会合で披露されたという演説文でチョン氏はこう述べていた。


後任の最有力と目されるのは、公安省出身のトー・ラム国家主席だ。18日に事実上の書記長代行となった。現職書記長の死去という混乱をおさめ、26年の共産党大会を無事に迎えられるか。汚職撲滅の実行役として多くの敵をつくったとの見方もあり、権力基盤は決して盤石ではない。