このところ、「サリン」という化学物質が、再び注目されている。
日本人にとっては、さまざまな有毒物質のなかでも「サリン」は、忘れがたい薬品名である。
今、このサリンが、中東やシリアで、作られ、使われている。
サリンはもともと、一番最初は、世界大戦中にナチスドイツによって作成された。
もともと、さまざまな物質に化学反応を起こさせて、有毒物質を作ろうとしてさまざまな実験をしていたようである。
もちろん、そのなかには、ナチスのある意味の「理想」から、人類とその生活にとって有益なものを生み出そうとするものもあった。
しかし、サリンは、化学兵器として、有毒な化学物質を作ろうという試みから生まれたものである。
ただ、別の物質を作ろうとして、その途中経過で生まれたものであるようだ。
サリンの、主な成分に、「リン」がある。
「リン」は、たとえば、農業や園芸で植物を育てるための有益な肥料として、「窒素、リン酸、カリ」と言われるように、植物や動物にとって、なくてはならない物質であるし、また、身近に存在する物質でもある。
このリンが、独特の化学反応を起こさせると、サリンになる、というわけである。
この「独特の反応」は、自然界では起こらず、人が、特に化学を修めた人が、人為的に作ろうと思わなければ、作成できない、ということである。
サリンは、たとえば、日本の高校理科の実験室程度の化学反応の設備があると思って差し支えないかもしれない。
そこに、サリンを合成するための薬剤が、購入するなどして、手に入るかどうか、である。
また、化学反応には、「コツ」「修練」が必要になるので、たとえば、火加減とか、あるいは、微妙な温度や湿度、圧力である。
そうした化学的な環境と技術と材料があれば、比較的、易く作ることが可能である。
これは、大規模な工場設備が必要だ、とか、大規模な機械による圧力が必要だ、という意味ではない、ということだ。
量の多少にもよるが、少量であれば、自宅を改造した実験室で、細かな器具を集めて行うことも可能だろう。
しかし、サリンは、少量でもとても効果の高い薬品であるので、目的によっては、小規模な化学設備で作成することもできるだろうと思う。
また、サリンは、とても不安定な化学物質であり、たとえば、作ったサリンの液体をガラス瓶に入れて保存しておくとか、作ったサリンを錠剤にして保存して持ち歩く、ということは、化学的にできない物質である。
たとえば、「不安定な化学反応」として、身近なところでは、私たちもテレビコマーシャルなどで見ることができる、美容を目的とした染髪罪に見ることができる。
この市販されている薬剤は、常に二種類の薬液が備わっており、「染め」を行う直前に混ぜて使用する。
これは、美容用のパーマ液でも同じであるが、二種類の薬剤をそれぞれに保存しておいて、使う時だけ、目的の状態にしたいときだけ、混ぜて化学反応を起こさせ、化学反応が起こっている間だけ、使える状態になる。
こうした、不安定な化学反応を期待するためには、サリンにとっても、二種類の薬剤をそれぞれに持って、そして、「使用」するときに、混ぜる、ということになる。