今週の「花子とアン」は、花子の人生の転機となる場面だったようだ。
特に、家族、というところに、ポイントが置かれていたように思う。
今週の「グッバイ!はな先生」のストーリーは、女学校を卒業してから、故郷の山梨に戻って就職した花子が、次の夢を目指して東京に上京するまでの経緯を、描いたようである。
ターニングポイントとなる今週は、花子の周囲でいろいろなことが起こる。
考えてみれば、一教師として一生を故郷で生きるつもりだった一人の女性が、一念発起して上京するというのは、大変なモチベーションを必要とするものだ。
私自身も、北海道から東京に出る、とか、群馬県から東京に出る、というのは、大変な人生のテーマであった。
特に北海道にいたころには、大学を選択するとき、就職先を選択するときには、「東京に出るかどうか」というのはとても大変なことで、友達がいち早く上京を決めると、寂しさや人生の道行きというのを考えて、自分の将来を、眺めては立ち尽くすような気がする。
上京を決める花子の周囲で起こることは、特に、家族関係の変化である。
変化というよりは、ゴタゴタであるかもしれないが、ここで花子の人生と教育に大きな影響を及ぼした祖父・周造が、その生涯を閉じるのである。
花子の初めての小説を見届け、孫である一家の長男の出征も、孫娘たちの就職も北海道へお嫁にいった「もも」もいた。
また、行商で家を空けることの多かった婿殿・吉平も、戻ってくる。
こうした、家族ひとりひとりの、人生のターニングポイント、節目、ライフイベントが、同時に重なるときなのである。
祖父は、年齢を重ねてきた分、こうした、娘や娘婿、孫たちの人生を、遠く、まるで家の奥から、静かに見守ってきたような気がする。
これまで正直言ってあまり存在感がなかったような気もするのだが、その老父たる存在はやはり確かなものであった、と実感させられるのである。
そして、花子を女学校に送り出した時と同じ言葉をいう。
私もこの言葉はとても印象的に覚えていたので、この人生訓が、花子の人生選択に大きな影響を与え、その後も、彼女の仕事に対するスタンスになったと思うので、とても大切だと思う。
それは、「その手でしかできない仕事をして、みんなに見せてください」というものだった。
女学校へと送り出すときには、花子の手を握って「この手はもう、農家の仕事をする手ではないんだよ」と言ったのである。
その人には、その人にしかできない、人生の「仕事」というものがあるのではないか、と思いたい。
そして、花子は、東京の出版社から申し出を受けていたことを、承諾して、挑戦する気持ちで東京に出てみることにする。
ライフイベントは、家族のそれぞれが、増えたり減ったり、あるいは、「これからも家族として絆を続けていきますか?」という大きな問いかけにぶつかるときかもしれない。
そうした時期は、まるで、時代の空気や、人生の雰囲気が、とても大きく変わるような気がするのだろう。
花子のお得意の空想では、「はな」だった名前が「花子」と呼んでみるだけで、呼吸をすることも、空の色も、変わって見えるのだという。
このところ、時代の空気というのが、とても変化してみえる。
家族や友達や、時代というのが、とても大きく変化している、ライフイベントのときかもしれない。
その大きな曲がり角を曲がった先には、きっといいものがあるのだ、と思う。
花子は、人生の次のステージに、立ち向かっていく。