3月もお彼岸すぎ、となった。
東京でも桜の開花が近づいている。
毎年、3月のおわりぐらいには、桜の開花がトップニュースに入ってくる。
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
と詠ったのは、平安時代の歌人だっただろうか。
私たちの心は、その時代から、どうにもまったく変わらないようだ、と思う。
毎日、天気予報では、きょうは桜前線がここまで来ました、というイラスト入りの情報が入ってくる。
それも、きれいな桜色で、濃い桜色、淡い桜色、と、薄絹を重ねたようだ。
花の色、というのは、どんなに重ねても、くどくなりすぎない、不思議な色合わせだと思う。
私は、北海道に住んでいたので、桜というと、ゴールデンウィークが、見ごろだった。
年によってちがうのだが、やはり、5月の3日から5日くらいが、満開となって、円山公園でも旭山公園でも、ドライブがてら、出かけたものである。
そういう話をすると、本州の友達は、けっこう驚くものだ。
台風も同じく、桜前線も、東京を通り過ぎたあとも、北上して仕事を続けている、というわけだ。
北海道では、桜も梅も、同じ時期に咲くので、桜と梅の花の区別がつかない人もいる。
梅の立ち位置がどうにも薄くなるところもある。
北国の春はいっせいで、水仙もれんぎょうも勿忘草もムスカリもユリも、いっせいに5月に咲く。
本州では、もう1月から、蝋梅や黄梅が咲き始め、少しずつクロッカスが芽を出し始めるから、春は春、といっても、ずいぶんと幕の上がり方がちがうものだ。
これから、春四月の転勤で、北上する人は、東京の桜と北国の桜と、花を二度見ることになるだろうか。
桜前線とともに北上してきた、東京からの旅人を、心から歓迎していたあの、五月のお花見シーズンの風の爽やかさを、思う。