バイデン米大統領「民主主義を守る」 一般教書演説全文:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN085VV0Y4A300C2000000/
「全ての人は平等」。米国の理念に立ち返るとき
最後に言いたいことがある。そうは見えないかもしれないが、私もこれまで様々な経験をしてきた。私くらい年を重ねると、明確にわかってくることがある。
私はとある米国の物語を知っている。米国を過去に引き戻そうとする人々と、未来に進めようとする人々の間で起きるこの国の精神をめぐる闘いの物語だ。
私の生涯は、自由と民主主義を受け入れ、米国を米国たらしめる、核となる価値観に基づいた未来を築くことを教えてくれた。正直さ、礼儀正しさ、気高さ、公平さ。すべての人を尊重し、すべての人に公平な機会を与えること。憎しみに安住の地を与えないこと。
私と同世代で違う物語を見ているひともいる。恨みや復讐(ふくしゅう)、報復の物語だ。でもそれは私ではない。
私は第2次世界大戦のさなかに生まれた。ペンシルベニア州スクラントンとデラウェア州クレイモントで、この国を築いた労働者階級の人々の中で育った。
キング牧師とロバート・ケネディという2人のヒーローが暗殺されるのを見た。そして彼らの遺志を継いで、私は奉仕の道を志すようになった。
ほとんど偶然のように郡の議会議員となり、29歳で上院議員に選出された。そして副大統領となった。米国初の黒人の大統領が誕生し、現在は自分が大統領となり、初の女性の副大統領も誕生した。
キャリアのなかで、私は若すぎると言われたり、年を取りすぎていると言われたりしてきた。でも若かろうが老いていようが、私は常に持ちこたえるために必要なことを知っている。私たちを導く北極星は「全ての人は平等であり、生涯を通じて平等に扱われるべきだ」という米国の理念そのものだ。
私たちはその理念を完全に実現したことはないが、そこから離れたこともない。そして私はこれからもこの理念から離れるつもりはない。私は楽観的だ。
国民の皆さん、私たちの国が直面している問題は、私たち自身がどれだけ古いかではなく、私たちの考え方がどれだけ古いかということではないだろうか。
憎しみや怒り、復讐、報復は、それぞれ最も古い考え方の一つだ。しかし、私たちを後戻りさせるだけの古い考えでは、米国を先へと導くことはできない。可能性の国である米国を率いるには、今私たちが何ができて、何をすべきかという未来への構想が必要だ。
今夜、あなた方は私の話を聞いた。私には民主主義を衰退させるのではなく、擁護する未来が見える。選択の権利を回復し、自由を奪うのではなく守る未来が見える。
中産階級がようやく公平な立場に立ち、富裕層が妥当な税負担をする未来が見える。気候危機から地球を救い、銃による暴力から国を守る未来が見える。
何よりも、全ての米国人のための未来が見える。全ての米国人のための国家が見える。そして、私は常にすべての米国人のための大統領であり続ける。なぜなら私はあなた方を信じているからだ。私が米国の未来にこれまでになく楽観的になれているのは、あなた方のおかげだ。
だから、未来を一緒に築いていこう。私たちが何者かを思い出そう。私たちはアメリカ合衆国だ。共に行動すれば、私たちの力を超えるものは何もない。
皆さんに神のご加護がありますように。神が我々の軍隊を守ってくださいますように。ありがとう。