2014年5月6日火曜日

都市計画の楽しみ。

東京では、6年後の東京オリンピックをめざして、さまざまな形で新しい都市計画が進んでいるようである。
新国立競技場の建設計画に関しては、日本国内のそうそうたる建築家のメンバーが、都市景観や東京・日本の文化伝統までも含めて、集っては計画を練る、というふうになっているようだ。
それは、計画というよりは、夢を語るようなものかもしれない。
オリンピックの競技場が設立される予定地域では、すでに土地の値上がりや、あるいは早々にこの地域に可能性を見出して、移り住む人たちもいる、という話である。
各種鉄道やバス、地下鉄なども、新しい車両や路線を作るには、もってこいの機会となるだろう。
こうしたことを考えると、私も、小さな都市模型を作って、建物や樹木やときにはそこに集まる人々の模型も作りたくなる。

実際には、現代の都市計画において、頭を悩ますのは、交通の問題かもしれない。
都市への人口集中において、交通網の整備は、都市計画の重要なテーマのひとつだろう。
私がそのとき思い出すのは、誰かの本に、これも引用されていた話だと思うのだが、人口集中の社会において、こんな興味深いアイディアが紹介されていた。
それは、都市、たとえば東京において、23区ほどであるから、中心地を真ん中にして、半径20キロメートル以内は、個人的な車両は立ち入り禁止区域にする、という内容である。
そして、この半径20キロメートル以内には、公用車しか立ち入れないようにする。
公用車とはたとえば、救急車、消防車、公共交通機関のバスなどである。
それから、搬送用のトラックは認可制になり、個人が車で移動したいときにはタクシーを使うことになるが、このタクシーも台数が決まっていて、認可制となり、厳しい安全基準が定められて、定期的な点検を行う、ということになる。
もちろん、ドライバーも厳選されることになるだろう。

こうした都市計画は、札幌市にはあったようだ。
これは、札幌に暮らしていたときに、誰か人から聞いたのであるが、実際にそうした都市づくりになっていたと思う。
札幌はもともと、碁盤の目の地図でわかるように、計画都市である。
札幌駅と大通り地区の中心部から、東西・南北に地下鉄が伸びていて、その東西線の東の端に、「新さっぽろ」という駅がある。
この駅は、地下鉄東西線の終点であるが、ターミナル駅となっている。
このターミナル駅は、バスターミナルとなっていて、札幌からより北へ、東へ、という地域へは、バスがたくさん発着している。
それなので、恵庭や千歳、江別方面、各大学や高校へ向けてのバスが、こまめに発着している状況だ。
それで、江別方面から札幌の中心部へ行きたい人は、バスで一度「新さっぽろ」まで来て、ここで地下鉄に乗り換えて、中心部に向かってください、ということになっていた。
それから、「新さっぽろ」には、大きな駐車場も完備されていた。

また、地下鉄東西線の、新さっぽろ駅から、もう一駅、都心寄りの、「ひばりが丘」の駅もバスターミナルになっていて、ここは、長距離バスのターミナルになっていた。
このあたりで「長距離バス」というと、深川や留萌、旭川、千歳空港、という目的地となる。
だから、千歳空港から札幌都心へ、人が集まるときには、公共交通機関である、バスと地下鉄を使うことが、主たる交通路になっているわけである。

それで、都心部は、地下鉄の東西線と南北線、そしてバスと市電(路面電車)の組み合わせでほとんどの交通が往来できるようになっていた。
だから、私は、個人的に自動車免許を取るとか、自家用車を持つという必要性がまずなかったので、免許を取らなかった。
それで充分に、買い物も映画館も、友達と会うことも、できたわけである。

そうした都市計画も、また一案として、考えてみるのもありかもしれない。

余談であるが、もしもこうして、人々が基本的に公共交通機関を使う、というライフスタイルに替えるとしたら、もう個人で車を運転するという時代そのものが変化することになる。
化石燃料には限りがある。
ドライブ文化というのは、ある一時代の文化として特筆すべきこと、となるかもしれない。
そうして、車文化、自動車産業というのが、ない、という方向になっていくと、日本には、そんなにたくさんの電力が必要ない、ということになる。
私が、原子力発電は必要なのではないかと考えていた理由のひとつが、日本全体の経済の仕組みのことで、たくさんの工場を稼働させるため、車の輸出をするために、たくさんの電力が必要なのではないか、と考えていたからである。
もしも、工業、自動車工場が、あまり必要なくなるような、日本全体のライフスタイルの変化が起これば、本当に、電力は、自然エネルギーだけでやっていけるようになるかもしれない。

都会においても、自転車で移動するという、若い人たちのエコロジーの行動が、始まってきている。
時代の変化に合わせた都市づくりは、夢であり、理想であり、語るに充分な楽しい話題である。
新しい時代の、新しい都市づくりに、参加することは、未来を語ることであり、子どもたちに新しい時代を、開いてあげることにつながっていく。