4月から始まった「とと姉ちゃん」も、第5週目。
ゴールデンウイークまっただなかの放送週だった。
こうして、半年間も同じドラマを観続けていると、祝日の週もあれば、雨の続く週もあり、また晴天の週もある。
ゴールデンウイークでお出かけした人にとっても、録画して観る、という選択肢があるから、続けて観ることができて、本当にうれしい。
考えてみれば、5週間もたって、物語はスローな進み方をしている。
常子が子ども時代から始まって、お父さんが亡くなって、東京へ来て、と、なんだかそこまでである。
でも、日々の心模様が丁寧に描かれていて、まったくあきないドラマ進行である。
15歳、女学生の迷ったり戸惑ったりしながら、ひとつひとつ乗り越えていく、その小さな体験の積み重ねが、のちの常子の、「あなたの暮らし」出版への、道筋になっているのだろう、と思う。
今週は、「初恋」というテーマも出されてきた。
お相手は、帝大生で、植物の研究をしている青年である。
常子がのちに、「あなたの暮らし」で、男女平等のパートナシップを持つことになる、天才編集長・花山氏とは、どのようにつながっていくのだろう?と思わせるところがあって、先の展開も含めて興味深い。
もともと、初恋、というのは、娘さんにとって、父親の影響が大きいと言われている。
結婚相手も、父親ととてもよく似ている、と通説として言われている。
自分の場合はどうかな?と思わず考えてしまう。
むしろ、「お父さんとはまったくちがうタイプの人がいい」と強く思っていたように、私は思う。
でも、結婚してみたら、周りの人から、「お父さんとダンナさん、そっくりね」と言われて、「そんなはずはなかったのに…」としょげかえる(?)状況である。
さて、常子の場合は、どうだろうか。
出会った青年、星野武蔵は、まず「武蔵」と書いて「たけぞう」と読むあたりから、父親・竹蔵を想像させる。
そして、たとえば森田屋の大将・宗吉などは、江戸っ子のがらっぱちであるが、それと対照的に、星野さんは、優しくおとなしい印象がある。
植物の研究もしているし、まさに「草食系男子」というところだろうか。
父・竹蔵も、家族に対して、敬語でお話しするような、紳士的で温和な性格だったので、やはり常子は、父の影響をもろに受けているように思える。
しかし、男性というのは、誰もが、森田屋の宗吉のような「男の世界」「男のやり方」というのを、持っているのではないだろうか。
そして、女性たち三人姉妹と母、という家族から見ると、この「がらっぱちさ加減」というのは、ひょっとすると、男性への恐怖心になりかねないほどの、荒っぽさがある。
そこに、奥さん(ファブリーズの人だ!)と、かわいらしい娘さんが花のように寄り添っているのだから、家族というのは不思議なものである。
この宗吉は、常子たち四人家族に関しても、一家の大黒柱の役割を果たしているように思える。
でも、実際に竹蔵が生きていたら、父親というのがそこに厳として存在していたら、娘の常子は、男の子を、家に連れてきたり、ごはんを作ってあげたりは、できないはずである。
このあたりは、母子家庭の、一般家庭とまったくちがうところなのだろう、と思う。
もし父親が生きていたら、水か塩をかけられて「帰れ」と言われたか、あるいは、常子が、「女学生なのに、まだ早い」と、がっちり叱られたところだろうと思う。
母子家庭において、女の子の育て方や、あるいは、思春期になってボーイフレンドができたときに、どのように対応するか、このあたりは、考えさせられるところである。
結局のところ、この初恋は、なんらかのいきさつで「実る」ということはなく、常子は、大人になっていくことになる。
ここで、初恋で痛手を受けて、「もう結婚なんてしない」という経験になっていくのか、それとも、初々しい、キラキラ輝くような恋愛を体験して、「男の子っていいな」「男の子と付き合うと、面白いことや、楽しいことが、いっぱいあるな」と思っていくのか、そのあたりが興味深いところである。
私は、男の子、というのは異性であり、異文化であるから、自分と同じものだけを仲間だと思ったりするのではなくて、知らない人、知らない性質、わからない考え方、わからない価値観を、わかろう、理解しよう、とがんばることは、大事なことだと思う。
男性と女性は、しょせんはちがう生き物なのかもしれないが、その異文化を、「わかろう」「理解しよう」「仲良くしよう」と、すごくがんばったときに、異文化との交流から、素敵なものが生まれてくるのではないか、と思う。
その「素敵なもの」というのは、これまで見たことのない世界だったり、これまで見たことのない知識だったり、あるいは、これまで体験したことのない、自分自身の感情だったりするのかもしれない。
そして、今週の常子がそうであったように、これから一生、生きていくときの、自分自身のポリシーとなるもの、「ごはんをきちんと食べよう」という、信念、自分自身を、発見するものなのかもしれない。
私は、森田屋の宗吉みたいのを、おそれずに理解しあいたい、と思うし、そうしたときに生まれる、キラキラした感情、発見、好奇心、というのを大事にしたい。
もう一歩踏み込んで、男性たちの世界を嫌わずに、おそれずに、互いに歩み寄りたいものだ、といつも思っている。
それが、私自身が初恋や結婚や父親から、体験して得てきた大切な宝物だ、と思う。
新しい発見をさせてくれるドラマ「とと姉ちゃん」。来週も期待して観ています。