「人生がときめく片づけの魔法」を読んで。
三日間で、一気にというより、味わいながらじっくり読んだ本でした。
筆者の近藤麻理恵さんも、私と同じく『「捨てる!」技術』(辰巳渚著・宝島新書)に衝撃を受けた人のひとりで、あの「片づけ法」を実践したかたでありました。
私自身も、「捨てる」の技術では目からうろこが落ちたというか、片づけに開眼したところがあり、以来、自分なりの「捨てる」基準や、収納法を、割合に身近に体験していた人間だということがわかりました。
そして、人々の暮らしが豊かになり、「モノ不足」に悩まされたりしない現代社会において、ますます「モノ」と自分、「モノ」と生き方が、追究され思索され、ときには哲学される時代になった、とはっきり認識しました。
近藤さんの、「モノ哲学」「モノ感性」には、本当に脱帽します。
そして、実用的なものを残すこと(捨てるものを選択するというより、残すものを選択して整理整頓を実践していく)のではなく、「感性にまかせて、ときめくものを残す」という点で、この本は他の類書とはちがう個性を放っているように思いました。
私自身を振り返ってみれば、近藤さんに伝えたいくらいのうれしさですが、「捨てる技術」を実践して、空いたスペースに、「大好きなものを集める引き出し」を作っていました。
それは、特別に実用的なものでもないし、今すぐ使うものでもないのですが、気に入って買って、もったいないからつかわない、小花模様のがまぐち、とか、屋台で販売されていたガラスのおはじき、とか、大事に使っていたけれど機種変更でお役御免になった思い出の携帯電話などが入っています。
そして、その「大好き引き出し」をときどき眺めては、ときめいています。
先日、買い物に行って、そのときは髪飾りを選んでいたのですが、
「人は案外、ときめくものを残す以前に、ときめくものを購入していないのではないか?」という思いを持ちました。
私が一目でときめいたのは、赤いギンガムチェックの髪飾りでしたが、
それを買おうかどうか迷ったときに、隣に置いてある、ベージュの飾りを手に取って「こちらのほうが、着る服に合わせて応用が効くかしら?」つまり「無難かしら?」と考えてしまったのです。
人は案外、買い物をする段階において、「モノ」と対峙していて、ときめきや感性でモノを選んではいないのかもしれないです。
また、近藤さんがおそらくは生まれついて都会の賃貸集合住宅で暮らしてきたことを考えました。
私のような、地価の低い田舎で持ち家の一軒家で暮らしていたら、「モノ」「片づけ」に関する考え方はまたちがってきたかもしれないです。
それから、近藤さん、彼女は本当に本を捨ててくださいまして…。
私は、本は捨てられないです。
本好きの人はみなそうだと思います。
20年前に読んだ本もきちんとおぼえていて、30年後に手に触っていたい、それが本好きの人間の感覚ですよね。
私だったら、部屋に山と積まれた本を、なんらかの形で(今コンピュータ検索もありますし)整理して、自分だけの蔵書館をいつか作りたいですね。
また、私は手芸好きで、余り毛糸は宝の山です。
そういった趣味のものの整理・収納に触れられていないのはちょっと残念でした。
とはいえ、彼女の仕事は、20代、30代の女性たちからの要望が多いとのこと。
「老前整理」どころが「若年整理」が起こっている現状を知り、現代の若者層のひとつの姿をまた視点を変えてとらえなおしてもらえた気がします。
サンマーク出版というところは、「なんかちょっと不思議?」という内容、つまりスピリチュアルであったり、思想的であったりする記述を含んでいます。
「捨てる技術」が実務に徹していた分、その後数年たって、こうして「ハートウオーミング」な、心温まるような「モノ」との対話本が出てきたことに、また新しい時代の到来を思うしだいです。
「人生がときめく片づけの魔法」
近藤麻理恵(こんまり)著
サンマーク出版
https://www.amazon.co.jp/人生がときめく片づけの魔法-近藤麻理恵/dp/4763131206/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1547945547&sr=8-1&keywords=%E4%BA%BA%E7%94%9F%E3%81%8C%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%82%81%E3%81%8F+%E7%89%87%E3%81%A5%E3%81%91%E3%81%AE%E9%AD%94%E6%B3%95