2017年5月13日土曜日

NHK連続テレビ小説「ひよっこ」第6週「響け若人のうた」感想。

五月。
昼間は夏のように暑くなる。
新緑もまぶしい季節に、テレビドラマはぐんぐんと成長していく。
といっても、物語の進み方は、それほど早くはない。
ヒロインが東京に出て、トランジスタラジオ工場に勤めた。
その日々を、丁寧にひとつずつエピソードを重ねながら描いていくドラマとなっている。

私は、やっぱり、「乙女寮」のエピソードが一番楽しいと思った。
個性豊かな女子たちが、集まっては、笑ったり話したり、時には泣いたりもする。
ガールズトークの楽しさを、ドラマで描けるかというと、とてもむずかしい手法だと思うので、すごい、と思う。

乙女寮のそれぞれの女の子の個性、キャラクターが、上手に描かれていると思う。
脚本の岡田 惠和さんは、きっといろいろな女の子を見て、キャラクター分析をしているのだろう、と思う。

こうなると、まるで、新進女優の品評会みたいにもなってくる。
でも、ドラマの中の、乙女寮の女の子たちも、素の新人女優さんも、東京に出て、夢を追いかけている、若い女性たちである。

それぞれに、故郷を持ち、複雑な事情を持ちながら、夢を実現するために、東京に出てきたわけである。
朝ドラ女優というチャンスを生かすための、「一生懸命さ」が、伝わってきて、思わず応援したくなる。
どの女優さんも、ブレイクして、芸能の新しい時代を創ってほしいものだ、と思う。

今週の「ひよっこ」で、一番の目玉はガールズトークであるが、なかでも私が一番面白かったのは、「恋の話=恋バナ」だった。
寮の一番の先輩である、秋葉幸子(あきばさちこ)には、彼氏がいる。
この彼氏は、乙女寮に週に一回、コーラスの指導をしにくる。
音楽家を目指している好青年である。
お名前は、高島雄大さん。

この高島さんと幸子のデートの様子が、とても「あるある」状態である。
映画で西部劇を見れば「君はインディアンの気持ちを考えたことはないのか」というし、会話では、ロシア革命について、とうとうと語る、というのである。
女子のほうでは、マイフェアレディ、つまり、町の花売り娘が、素敵なレディになるという恋物語を夢見てうっとりしているときに、男子というのは、ほんとにけしからん!と思うのである。

ここで増田明美さんの「一口メモ」が入った。
この時代、学生運動が起こった時代であるが、ロシア革命に影響されたそうである。
そして、ロシア民謡がとてもはやって歌われたのであるが、シベリア帰りの人たちからもたらされたそうである。

この、ロシア革命に影響された青年・高島は、みね子のところに用事があってやってきた警察官の綿引の姿を見て、とっさに逃げようとする。
きっと、日本においても革命を起こそうと、何か活動をしているんだ、と思う!

それなのに、「乙女寮の女の子たちに、幸せになってほしいよね」などという話をして、革命家と警察官は、屋台ラーメンでなぜか意気投合する。

物語がどんどん、波乱に満ちてくるかんじがする。
ゆったりとしたドラマの積み重ねが、突然、嵐の情景になる、というのも、ドラマのドラマティックなところだと思う。
そのあたりの、ストーリー展開の「うまさ」を、じっくりと味わいたいものだ。

今週のテーマの「響け若人のうた」は、乙女寮の女子たちが高島に指揮されて歌ったロシア民謡「トロイカ」の歌詞の一部である。

懐かしい、いろいろな歌が歌われるので、本当に楽しいドラマになってきた。
今週は、私も、家族や友達と、あるいは家事をしながら、「雪の白樺並木~♪」「高鳴れバイヤーン」と何度も歌っている。

昭和のなつかしい、「ワンポイントメモ」も、楽しめる。

これからも、大変な平成を生きている私たちが、現実とドラマの間を行ったり来たりしながら、日々を元気に生きていく糧にしたい、そういうドラマであってほしい、と願っています。

楽しみにしています。

2017年5月6日土曜日

NHK連続テレビ小説「ひよっこ」第5週「乙女たち、ご安全に!」感想。

五月にはいった。
新緑のまぶしい季節である。
朝ドラ「ひよっこ」は、ゆっくりと着実に、お話を続けている。
まるで季節の歩みのようにゆっくりと、高校三年生から、卒業、就職、と歩んできた。

今週は、集団就職で上野駅に着いたところから始まる。
すでに就職口が決まっていたので、その会社に着いて、寮に入る。
ヒロインみね子の働く「向島電機」は、トランジスタラジオを作る工場である。
当時、トランジスタの発明によって、ラジオは、「一家に一台」から、「ひとり一台」の時代にはいった、ということである。

とても高価なラジオだったらしいのだが、その分、みね子たちのお給料もとても高かった、という話である。

この向島電機はアイルランドに工場を持つということなのだが、NHKなりにいろいろ「仕掛け」があるようである。
というのは、アイルランドに工場をもったのは、SONYだった、ということである。
それから、「トランジスタ」ってなんだろう?と調べてみると、これは、今、話題の、「半導体」なのだそうである。

電流と電圧を調節する機械で、このトランジスタの発明によって、ラジオもテレビも小型化され、パーソナルコンピューターでも、スマートフォンでも、使われるようになった。

みね子はまさに、日本の高度経済成長期を背負って、その真ん中で働いている、というわけである。

初めての休日まで一週間を、そのまま一週間の放送で観てきたことになる。

それにしても、高校卒業、就職、というのは、人生の激動の時期である、と思った。

私は、運転免許の取得のために、昨年秋から、自動車教習所に通っていた。
そして、いろいろなことを考えた。
運転免許があると、人生が変わる、と教習所の指導員の先生も言っていた。
行動範囲が広がると、出会う人も変わるし、就職口も変わってくる。
免許のない人には見えない景色が、免許のある人には見えるかもしれない。
老後だって、きっと変わってくる。

免許を取るということは、今後の人生を変えている、ということなのである。

しかし、昨年秋から今年の春にかけて、高校を卒業して就職、進学する、高校三年生たちは、「人生の選択の時期である」ということなど、何も知らずに、スイスイと免許を取得していく。

就職先も、そこで出会う人たちも、これからも人生に大きな影響を与えてきて、それはもう、変更不可能な選択になるかもしれない。
選択の幅は大きいが、その分、不可逆性の大きい選択を、いくつも、いくつもしているのが、高校三年生の春だ、ということになる。

「ひよっこ」の一週間でも、寮に入り、先輩に出会い、仕事仲間に出会い、ルームメイトと出会い、仕事と出会い、新しい人生に、どんどん出会っていく。

大人の私たちだったら、住む場所が変わって、仕事が変わって、寝る場所が変わって、枕が変わって、ルームメイトが変わって、そんな一週間は、リポビタンDでもないと、やっていけないかもしれない…。

東京に着いた、その日の夕ご飯は、カレーライスであった。
一口食べて、「おいしい」という。
「東京の味がする」という。

私も、北海道から東京に着いたそのときには、本当にそう思った。
飛行機のなかでは緊張して、お姉さんのくれるジュースも口にできなかった。
羽田に着いてほっとして、すごくおなかが空いて、でも座るところも食べるところもなかなかなくて、やっと見つけた、おしゃれな店では、すごく高くて…。
それでも、アイスコーヒーとサンドイッチを注文して、一口いただくと、それは、まさに、東京の味がした。

パンは北海道のパン屋さんよりも、薄くて、四角くきれいに切りそろえてある。
マスタードも、べったりたっぷりではなくて、うすくきれいに、味が整うように塗ってある。
ハムも高級品で、レタスも薄くてしんなりしている。

「東京の味だ」と思ったとき、突然心細くなって、羽田空港の壁に立ちすくんで、あたりの喧噪を見渡した。
そして、しばらくしてから「東京に負けるものか」と思って、ぎゅっとこぶしを握り締めて、モノレールの切符を買った。
私の、東京での第一歩の勇気が、モノレールの切符だった。
一歩踏み出す勇気が出せて本当によかった。
励ましでもあり寂しさでもあるのが、「東京の味」だと思う。
みね子も同じことを思ったのだ、とドラマを観ていて、思った。

これから、ヒロインみね子は、どんなふうに、人生の選択の時代を、選んでいくのだろう。
それは、偶然かもしれないし、大人が用意したものかもしれない。
そして、自分で選び取るものでもあるだろう。

人生の奔流のなかで、みね子が、明るい笑顔と、豊かな感情で、東京を生きていくことが、これからのドラマでも、とても楽しみです。

これからも楽しみに、観ています!!!