2014年11月5日水曜日

尊厳死についてあれこれ思う。

先日、アメリカで29歳の女性が亡くなった。
この一女性が広げている波紋は、この亡くなりかたが「尊厳死」というものだったことである。
ブリタニー・メイナードさんは、脳腫瘍を患って余命わずか、と宣告されていた。
尊厳死を選び、尊厳死が法律で認められているオレゴン州に移住した。

私たちが驚くのは、アメリカではこうして、州ごとに法律が異なっていることや、それが生命や生き方にとって、とても重要な法律であることである。

メイナードさんが、なぜ、どのようにして、「尊厳死」という選択をしたのか、詳細は明らかではない。
しかし、メイナードさんが、世界各地を旅して歩き、ネパールで学校の生徒を教えていたいきさつから、もしかすると、アジアの死生観、輪廻転生、というものを、学んだり触れたりしていたことも、考えられると思う。

それでも、尊厳死というのは、薬物を投与されての死であり、結局は自殺ではないのか、家族や医師もそれを手伝ったのではないか、という思いも払拭できない。

もしも自分だったら、重い病気で余命わずかと宣告されたら、どのように選択をするだろう。
あるいは、それが家族のことだったらどうだろう?

もし私だったら、やはり、与えられた命は精一杯生きたいように思う。
あるいは、家族であったら、最後の最後まで、家族として一生懸命、手を尽くしたい、一日でも長く、一緒に生きていたい、と願うと思う。

でも、そのときになってみないと、わからない、とも思う。

先日、ある小冊子をいただいてきた。
公民館や病院で、啓発のために行っているパンフレットの配布で、記入式になっている。
「私の意思表示ノート」というものである。
「自分らしく生きるために健康な時から考えましょう」と表紙に書いてある。

☆----☆
あなたの思いを大切にします・・・
「自分らしく生きる」とは、どのような生き方でしょうか?
誰にでも自分の望む生き方や、大切にしたいことがあると思います。

もし、あなたが、病気や事故などで判断ができなくなったとき、どのような治療を望みますか?
あらかじめ意思を示しておくことで、自分の望む生き方を家族や周囲の人に知ってもらうことができます。
また、自分の意に反して不必要な治療を受けなくてもよくなります。
あなたの思いを大切にしたいと考えています。
最後の瞬間まで「あなたらしく」生きるために、ご自分の意思を記録しておくことをお奨めします。

署名・同意される方々へのお願い
ご本人へ
☆気持ちが落ち着いている時に記入しましょう。
☆年齢や状況によって考えは変化します。考えが変わったら、そのつど書き直しましょう。
☆定期的に(一年に一度、誕生日など)内容を見直しましょう。

ご家族へ
☆ご本人の意思を十分にご理解、ご納得された上でご署名ください。

一回目 私の意思表示 ~私の思い、願い~
○年○月○日

もし、あなたが病気や事故により、
・現在の医学による治療では回復が見込めず、
・すでに死期が間近に迫っていると診断され、
・あなたが明確な意思表示ができない状態になった場合、
どのような治療を望まれますか?
ご自身のお考えに印をお付けください。
1、できるだけの治療を望みます。
2、延命治療は望みません。
3、今はわかりません。

☆ーーー☆

次のページには、延命治療についての詳しい記入ページが続いている。
胃ろうや、輸血、人工呼吸器、などである。

このパンフレットは、本人が明確な意思表示ができなくなったときに備えて、あらかじめ健康なときに、延命治療を望むかどうかを、考えて、決めておくものである。
「尊厳死」とは、多少、意味合いがちがうかもしれないが、延命治療をしない、ということは、同じことだと思う。

それにしても、「尊厳」とは、どういう意味なのだろう?
病院の治療といえば、検査の段階からすでに、「尊厳」からは、程遠い状況ではないか、と思う。
生きていきたい、と思えば、藁にすがってでも、生きていきたいものではないのだろうか?

昨日、散歩をしていたら、公園のベンチでお隣に、高齢のかたが、座っておられた。
なんとはなしに、話しかけられた。
「わたしはね、心臓にペースメーカーを入れていてね。
昔だったら人生50年、医学っていうのはすごいもんだね。
ほんとなら、わたしなんか、もうとっくに生きてないんだけどね。
ありがたい、ありがたい、って孫のような年ごろのお医者に、言っているんだよ。」

なにか、このお年寄りの声のほうが、人として本当のことを、言っているような気がして、心がやさしく切なくなった。