NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」第26週(最終週)「花山、常子に礼を言う」感想。
大好きな「とと姉ちゃん」。
きょう、その半年間の放送が終わった。
とても楽しかった。
振り返れば、いろいろなことがあった、半年間だった。
もちろん、ドラマのなかでいろいろなことがあったのだけれど、視聴者である私たちのほうにも、本当にいろいろなことがあったものだ、と思う。
4月には、熊本で地震があった。
その地震が鳴りやまないまま5月を迎え、6月にはEUの問題、7月にはテロの問題、8月には、次々やってくる台風、と、まさに嵐のような半年間だった。
個人的にも、たくさんのことがあった。
そうしたなか、毎朝毎朝、テレビドラマは続いていく。
私は、ずっと以前から、NHKの朝ドラが好きなのだけれど、その「好き」の理由は、自分自身の生活と、ドラマのなかのヒロインの人生が、並行して進んでいくところだ、と思う。
私が前へ進めない日に、ヒロインは一歩進んでいく。
逆に、ヒロインが悩む日に、私は「がんばれ」と言ってあげられる。
毎日、毎朝のドラマ放送が、どれだけ人々の力になっているか、ということを考える。
そして、半年間をようやく「クリア」した。
「とと姉ちゃん」の大きなテーマを、ふたつ、考えてみたいと思う。
最終週なので、「まとめ」ということを、少し考えてみたわけだ。
テーマのひとつは、「あなたの暮し」という意味だと私は思う。
編集長の花山さんは、戦争を体験したあとに、「あなたの暮し」を創刊することになる。
花山さんの言っていることが、少し哲学的なので、わかりずらくて、何度も考えなおした。
家族や友達とも、一緒に考えてみた。
それは、「あの戦争は、日々の暮らしを大切にしなかったから、そうなったのだ」という言葉の意味である。
日々のささやかな暮らし、庶民の暮らしを大切にしていれば、戦争にはならなかった、というのが、花山さんの哲学だ。
どういう意味だろう?
私なりに、こう思う。
私は、日本が戦争になるかもしれないときに、それは年の暮れだったけれど、障子の張替えをしていた。
日本的な文化であり、もう都会ではあまり見かけない風景かもしれないが、新しい年を迎えるために、障子の張替えをするのである。
障子の張替えは、とても繊細な仕事である。
とても細くて、ちょっと力を入れたら折れてしまいそうな桟、つまり「枠」がある。
そこに、水で溶いた糊をつけて、障子紙つまり和紙を、丁寧に張り付けていくのである。
この細い桟と、柔らかい和紙を触りながら私は思った。
戦争が起こったら、砲弾の一発もあれば、この障子は、壊れてしまう。
丁寧に心を込めて、張り替える、この障子が、「平和」というものに例えられるかもしれない。
そして、一発の砲弾が、戦争である。
平和というものは、とても繊細で、柔らかく、折れやすいものかもしれない。
けれど、この和紙を通して、日の光は、柔らかく部屋に降り注ぐのである。
花山さんと常子が、大切に作ってきた「あなたの暮し」は、こうして平和を一日一日、積み重ねることなのではないだろうか。
そして、その日々の暮らしを大切にすることが、「庶民の旗」をけなげに降り続けることなのではないか、と思った。
半年間、ドラマを観てきて、ようやくたどり着いた「暮らし」への、私なりの答である。
ふたつめのテーマは、「とと姉ちゃん」のタイトルである。
最終回に、大好きな「お父さん」「とと」が登場して、常子をほめてくれた。
お父さんに褒められるのは、うれしいものだ。
なかなか褒めてくれないものだ。
ドラマの最初の週で、「とと」と約束した、あのシーンを思い出す。
常子は、「とと」と約束をして、三つの誓いを立てた。
「家族を守る」
「鞠子・美子を嫁に出す」
「家を建てる」
これら三つがすべて、そうだった、父親の役割だった。
「お父さん」の仕事は、この三つなのではないか、と思う。
私たち、娘さんたちは、なかなかお父さんに近づくことができない。
いつも怖い顔をして、いつも怒っている。
でもその背中がなんだか寂しそうで、声をかけると、やっぱり怒られる。
一生懸命働いている「お父さん」は、本当は、「妻と娘たちを守る」ために、戦っているのだ。
そして、「家を建てて家を修理して家を維持する」ために、戦っているのだ。
そして、いつの日か、幼かった娘たちを立派に大人に育て上げて、お嫁に出すつまり、自立した女性へと導くのだ。
私は、最終回に登場した「とと」が、果たしたくて果たせなかった夢を、思う。
それは、漠然とした「夢」ではなく、責任であり、使命である、と私は思う。
幼い娘たちには、なかなか理解できなかった「お父さん」であるけれども、いつも遠くから、近くから、妻と娘たちを導き守るために、懸命に戦っている。
その「お父さん」には、きっと、「どうしたもんじゃろのう?」という、悩みが尽きなかったのだろう、と、「とと姉ちゃん」を見ていて、そう思った。
そして、素直に、「ありがとう」と思った。
半年間のドラマで、ヒロインと一緒に、「どうしたもんじゃろのう」と、悩みながら、長い長い坂を登って、こうして最終回にたどり着いた。
たくさんの人にお世話になりながら、励まされながら、私も、半年間のドラマ感想を書き終えることができた。
毎日歌っていたあのむずかしい歌も、ようやく、そらで歌えるようになった。
菜の花が咲いていた、あの四月から、長い道のりを歩いて、ここまでこられて、よかった。
私のドラマ感想を読んでくださった皆様にも、本当に心からお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
また、いつかどこかで、ドラマの感想を、書き綴りたいと思います。
その日まで。
本当にありがとうございました!!!